2021年10月01日 1692号

【議会を変える、市民と変える 京都府向日(むこう)市議 杉谷伸夫 人間として許されないと意見書】

 9月17日、向日(むこう)市議会は、私が提出した「沖縄戦戦没者の遺骨等を含む土砂を埋立てに使用しないよう求める意見書」を賛成多数で可決した。全会一致に至らなかったのは残念だが、公明党議員の賛成が得られたのは良かった。

 沖縄県庁前でハンガーストライキで訴えた遺骨収集ボランティアの具志堅隆松さんのお話を聞いた時は、国のひどさに憤ったが、向日市議会で意見書をあげるという発想には全く至らなかった。

 契機は、6月に茨木市議会が全会一致で意見書を可決したことを知ったことだ。調べると、全国で2ケタの自治体議会が意見書を可決するなど共感した動きが広がっている。それでも私の腰は重かった。この遺骨問題を向日市議会議員が「自分たちの問題」「向日市議会が国に直言すべき問題」として受け止めてくれるだろうか。

 茨木市議会では、どうして全会一致の意見書が実現できたのだろう。茨木市議会への請願を行った西尾慧吾さんに話を聞こうと、電話してみた。茨木市議会では、自民党会派の中心的な議員が、全会一致にむけて動いてくれたという。遺骨問題を巡っては「いくらなんでも」という思いが基地問題を超えて幅広い議員に共感されるのだと知った。

 「会派回りなど、私で良ければ何でもさせていただきます」―西尾さんの言葉に甘えて、議会直前に向日市に来ていただき、市民と一緒に話を伺った。その場で私が「向日市議会に意見書案を出す。議会初日に西尾さんと議会の全会派・議員に要請に行く」ことを話すと、参加者から「じゃ、みんなで行ったほうがいいね」と声が出た。

 私は、この意見書は全会一致で採択したかった。人道上の問題だからだ。でも難しいとも思っていた。向日市議会は、これまでに辺野古の基地建設に反対する意見書を3回、賛成多数で可決しているので、「遺骨の意見書も基地建設阻止が目的」と受け止めるだろう。議会の討論で、私は訴えた。「これまで沖縄の問題を何度か取り上げてきたが、それは主には沖縄の人々の自己決定権を尊重することを訴えるものだ。しかし遺骨を含む土砂を埋め立てに使うのは、それ以前の問題、人間として許されざることだ」

 この間の説得と西尾さんの熱意などが、基地問題より多くの議員の賛成で可決を実現できたのだと思い、ほっとしている。
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