2021年10月01日 1692号

【読書室/コロナ貧困 絶望的格差社会の襲来/藤田孝典著 毎日新聞出版 1200円(税込1320円)/生きていく資源は無償提供だ】

 「本書では、コロナ禍が私たちの暮らしに及ぼした打撃がいかに深刻であるか、その蔓延がいかにさまざまな問題を顕わにしたかを改めてとらえ直していきたい」と著者は書く。社会福祉士(ソーシャルワーカー)として生活困窮者を支援する現場に届く悲痛なSOSから本書は始まる。

 コロナ禍のもたらした雇用危機は2008年リーマンショックを超えている。コロナ禍で当時と次元が違う困難に見舞われ、20代の女性を中心に、非正規、小売、飲食業、単身者の相談件数が圧倒的に多く、「所持金が数百円で住居を退去した」「自殺のためのロープを買った」などの訴えが相次いでいるという。

 生活保護申請が増加している。しかし、窓口で申請が受理されないケースがある。常に受給抑制に動こうとする厚生労働省も、コロナ禍の休業等について従来の基準を適用しないように通知せざるを得ない。

 本書の第4章は、行政からNPO、労働組合まで実践に直結する貧困問題の支援相談窓口を紹介する。

 第5章では「誰一人取り残さない社会を実現する」と題して、解決への政策と運動の方向性を示す。その根本は、「住まい、医療、介護、教育、保育は『人が人として生きていくために必要不可欠な』資源」=「ベーシックサービス」であり、無償提供を整備すべきということだ。「現物支給で国民の命を早急に救う」「政府は『公助』を整備せよ」「正規公務員を増やす」「生活保護を受けやすくする」などとともに、「富裕層から臨時徴税する」を明記し、社会保障の根本的転換へ今こそソーシャルアクションを、と呼びかけている。   (N)
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS