2022年12月09日 1751号

【ミリタリー/日米共同統合演習「キーン・ソード23」/住民保護なき戦争準備訓練】

 日米共同統合演習「キーン・ソード23」が11月10日から10日間、全国で行われた。自衛隊から約2万6000人、米軍からは約1万人と、共同演習としては過去最大規模だ。「有事に対する即応能力を高める」がその目的とされる。

 沖縄の中城湾港では8日、防衛省がチャーターした民間船から自衛隊車両が陸揚げされ、公道を使って那覇駐屯地などに移動。また、17日、戦闘車両を与那国島に空輸し駐屯地に移動など、民間の施設や土地を使用した演習が実施された。浜田防衛相は「自衛隊が平素から柔軟に利用できるよう、地方自治体から協力をいただきたい」と述べている。

 これに対し、8日の中城湾港では、100人を超える市民が「沖縄を二度と戦場にするな」と訴えて座り込んだ。

 住民の不安を特にあおることになったのは、与那国空港への戦闘車両の空輸だ。陸上自衛隊の保有する16式機動戦闘車(MCV)を航空自衛隊の輸送機で運び、与那国空港から陸自与那国駐屯地までは公道を使って移動した。MCVは105_砲を搭載し戦車並みの攻撃力と最高時速100`ともいわれる展開力を持ち、「離島防衛の切り札」と称される兵器。このような車両が与那国のような国境の島で公道を走れば、住民が不安を抱くことは当然だ。

 武器が住民に見える状態で、島内を移動することを問題視した県は計画変更を求め、住民が抗議する中、訓練は強行された。今回の共同演習で、日米の軍事的な一体化はさらに進む。政府は「台湾有事」を念頭に「部隊の練度維持・向上が不可欠」と公言する。沖縄県民に、は再び戦場となることへの危機感が広がる。

 沖縄だけではない。鹿児島県の奄美大島では16日に陸自後方支援部隊と米海兵隊の連携訓練、17日には徳之島でも陸自水陸機動団の上陸訓練が行われた。両島市民が「戦争 絶対反対」「自然と平和を守ろう」と反対の声を上げた。

 防衛省は演習の意義を「領土と国民の命を守るため」と強調する。しかし、忘れてはならないのは、これらが「有事」の際に住民を守るための演習ではないという事実だ。

 奄美の「負傷者に対処」演習の負傷者はあくまで自衛隊員、米兵であり、住民は入っていない。軍隊が住民を守らないことは、沖縄戦で裏付けられている。自衛隊の南西シフト、日米の演習とも全く欠落しているのは、住民保護の視点だ。

 藤田 なぎ
 平和と生活をむすぶ会

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