2022年12月09日 1751号

【若い労働者が使い捨てられる社会を変えていこう/「最後まで闘い続けてよかった」/ワツコ争議勝利おめでとうの会】

 通信機器等を販売するワツコ(株)に試用期間中に不当解雇されたAさんは、会社の責任を問い地位確認を求めて裁判を闘っていた。今年8月、「解決金の支払義務を認める」等の勝利和解を勝ち取った。そして11月27日、「ワツコ争議勝利おめでとうの会〜若者よ声を上げよう!〜」が大阪市内で開かれた。(主催―ワツコ争議を支援する会、共催―なかまユニオン)

闘いぬいた3年間

 勝利和解となったワツコ争議の経過を振り返る。

 2019年6月、Aさんがワツコ(株)に3か月の試用期間付き正社員として採用される。7月に新入社員がAさんの右上腕部を殴打し負傷したことで、Aさんは「労災の費用請求書」を送付。8月5日、会社が一方的にAさんに試用期間満了(解雇)を通知した。

 なかまユニオンに加入し、20年4月、第1回団体交渉、6月、第2回団体交渉。その団交途中にも関わらず会社側が一方的に打ち切ってきた。7月、会社が京都地裁へ地位不存在確認請求の労働審判を申し立てたため、10月、Aさんが大阪地裁に地位確認で提訴し、労働審判が併合される。

 11月、なかまユニオンが大阪府労働委員会に団交拒否の不当労働行為の救済を申し立て、22年1月、大阪府労働委員会が会社に対して、▽団交に誠実に応じること▽団交を拒否するような行為を繰り返さない旨の文書をなかまユニオンに手交すること、を命令した。

 2月、大阪府が不当労働行為認定企業である会社に対して1月の入札参加資格停止措置を発表。

 8月11日、大阪地裁で勝利和解が成立した。

当事者のがんばりで

 井手窪啓一なかまユニオン委員長が「当事者が声を上げたことから始まった闘いだった。そして、あきらめなかったことで勝利した。地労委が命令を発したことで、大阪府が会社に対して入札参加資格を停止したことも大きかった。また社前行動で撒くビラが、回数を重ねるにつれて技術的にも内容的にも進化する成果も得られた」と報告した。

 波多野進弁護士は「事前に事実を確認してくれていたので、裁判は非常にやりやすかったです。入札資格停止の件もありますが、会社には社前行動が一番痛手だったようです。Aさんも、実際の証人尋問の時には、事実関係を冷静に話せたので、裁判もいい流れがつくれました」と称賛。

 小山敏夫「ワツコ争議を支援する会」事務局長は「9回の社前行動や近隣情宣行動、ユーザー要請行動に取り組んだことで、最終的に会社の対応を引き出せました。会は発展的に解消しますが、残予算は、若者の労働環境改善のための基金として、なかまユニオンに委ねたい」と提起した。

若者の未来を拓きたい

 会場には、なかまユニオン自慢の豪華な食事と、お祝いのケーキも用意されており、参加者からAさんに祝福の言葉がかけられる。

 Aさんの闘いを支えてきたなかまユニオン京都支部は、寸劇と歌の出し物を用意して、これまでの苦労を笑いを通して表現した。

 最後に、Aさんの「社前行動は気力が要りました。さまざまな行動に、一緒に参加してくれたみなさんには感謝しかありません。会社は、行動参加者をビデオに撮っていましたが、社内にも階段を写すフリをして社員を撮るカメラもある異常な状況でした。最後までやり切れて、本当によかったです。私の闘いは終わりましたが、これからは若者が働きやすい職場にしていくために、がんばっていきたいです」という決意表明のあいさつで会を終えた。

 若者が人らしく働ける社会をめざして、なかまユニオンはさらに闘いを進めていく。





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