2007年08月31日発行1000号

【「市民の力で貧困を絶つ」集会 北九州生活保護打ち切り餓死事件も報告】

 生活保護切り捨てやワーキングプアが問題になる中、「市民の力で貧困を絶つ!」をテーマにした集会が都内で開かれた(主催は生活保護問題対策全国会議)。福祉労働者・市民・弁護士・議員ら約300人が集い、貧困を克服する連帯の強化を訴えた。


 注目されたのは北九州餓死事件に取り組む高木佳世子弁護士の報告。7月10日、北九州市で生活保護を打ち切られた52歳の男性がミイラ化した遺体で発見された。タクシー運転手だった男性は肝臓を患って離職し昨年12月から保護を受けていたが、「辞退届」を強要されて保護打ち切りに。「ハラ減った。オニギリ食いたーい。25日米食ってない」と日記に書き残して餓死した。

 高木弁護士は「北九州市当局は『自立するとの意思があったから』と切り捨ての理由に辞退届提出をあげる。この指導をモデルケースとしていたことを市は撤回したが、謝罪はしていない。日記には『3月、家で聞いた言葉、忘れんど。書かされ、印まで押させ、自立しどう したんか』と記されていた。札幌市で月3万円のアルバイト収入があったからと、辞退届を強制された例もある。このままでは次の事件も起こる。昨年9月広島高裁で辞退届取り消しの判決が出たように、今回の餓死事件も違法性が高い。福祉事務所を相手に刑事訴訟に取り組む」。

格差ではなく貧困

 申請自体をさせないという「水際作戦」も相変わらずだ。石側亮太弁護士は大阪市の例を上げ、家賃11万円の家に住んでいる夫婦に対し申請の前提に引っ越しを要求したことは違法だとした。「夫婦は借金を抱え家賃も払えないのが現実。引っ越しには敷金なども必要。まず、申請書を受け取り、それから指導すべきだ」と批判した。

 貧困は高齢者ばかりではない。東北から夫婦で上京したという男性(40)が体験を語った。コンビニ弁当を作る食品会社へ派遣されて働いたが、勤務時間も休憩時間も話が違い労災補償や医療保険もなく3日間働いたのが限度。トラックへの荷物積み込みをしながら、ネットカフェ難民となった。「大手派遣会社は給料の半分をピンはねし、ケガをしても労災隠しをし、仕事がなくなれば首を切る。これは現代版奴隷制度ではないか。現在、ネットカフェ難民・若年ホームレスとその予備軍が多くいるといわれている。一日も早い救済を」と訴えた。

 講演した岩田正美日本女子大教授は「格差とは比較の問題だが、現在は貧困という言葉が正面で語られるようになった。貧困は社会的排除とあいまって見えなくさせられている。先進諸国における貧困の『再発見』が大切だ」。貧困を正面に置いたさまざまな人々の反貧困の運動強化が共通の確認となる集いとなった。

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