2007年09月07日発行1001号

【「穏健戦線」はアメリカの占領計画失敗の帰結である(2007年8月17日) イラクの政治的危機に関するイラク自由会議の声明】

 昨日、「穏健戦線(Moderate Front)」の結成が発表された。この連合は、イスラム最高評議会、ダーワ党、そしてPUK(クルド愛国同盟)・KDP(クルド民主党)の両クルド政党で構成されている。結成は、アヤド・アラウィ派(イラク国民合意)の閣僚引き上げ、「イラクの調和戦線」の一時離脱、アル・サドル派グループの政府からの辞職に続いて行われた。このことは、アル・マリキ政府が閣僚の半分以上が辞職したあげく法的支配力を失ったということを意味している。

 この新たな連合は、同時に、様々な宗派主義民兵を基盤にした政府の崩壊を防ごうという絶望的な試みとして出てきたものである。

 ブッシュの新戦略の宣言から6か月以上たち、また2万人以上のアメリカ軍が送り込まれた「法の執行作戦」以降も、イラクの治安状況は悪化している。ますます多くの罪もない人々が殺害され、治安の悪化する範囲がヒッラやディワニヤやナシリヤやバスラのような他の都市に拡大し、自殺攻撃作戦が増加し、宗派主義民兵が強化されている。また、テロリスト狩りの名目で、占領軍による市民に対する犯罪行為が増大している。アル・マリキ政府が直面した事態は、危機がどれほど深まっているのかを表している。

 統治評議会の設立の初日から、占領政策は民族と宗派による権力分配によっていた。それがイラク社会を分断したのであり、占領を承認し政治プロセスに参加した宗派主義と民族主義の諸グループ間の今日の紛争は、この権力分配の直接の結果である。また、国民和解や国民統一政府の設立、カイロ、バグダッド、シャーム・エル・シェイクの会議のような、アル・マリキ政府を行き詰まりから救い出すために占領軍によって推進されたあらゆる計画は、宗派間の分断を強化することになった。それは最初から占領政策としてとられたものだ。

 アル・マリキ政府の政治的行き詰まりを示すイラクの現状を、IFCは予想し推測していた。アル・マリキ政府からの閣僚の辞職、引き上げ、一時離脱は、権力と富の分配を巡る諸政党間の争いの反映であって、安全と自由、幸福を求めるイラク国民の希望や願いとは何の関係もない。さらに悪いことに、アル・マリキ政府と国民議会の中にいる多数の政党が、自らの民兵に命じて自らに有利なように力関係を変え競争者との交渉テーブルで立場を強めるために、宗派や民族を理由に罪もない人々を殺したのである。

 イラク自由会議は、2006年11月17日に発表した、イラク社会を暴力とテロの連鎖から救い出す政治状況に関するIFCの決議を再確認する。それには以下の項目が列挙されている。

 1.占領を即時終わらせる。

 2.現政府及び関係するすべての機関を解任する。

 3.すべての政治勢力、政党、労働者、学生、女性の代表が招かれる会議によって民族主義でない政教分離した政府を設立する。この会議は国連と他の国際機関の監督下におかれる。

 4.新たに設立された政府は、社会に安全と自由、幸福を提供することになる。

 5.イラク全土であらゆる民兵を解散させ武装解除する。

 6.政府は設立後、全国での総選挙を準備するための6か月間の時程を設定する。

 7.各候補者には、平等にすべての財政的、物質的資源を使えるようにする。

 8.有権者に対しての、いかなるグループ・個人による介入や脅迫もない民主的なプロセスを保障するために、イラクのすべての都市に国際監視員を配置する。

 9.選挙の十分な報道ができるように、すべてのメディアの人員に十分に取材する機会を提供する。

 IFCは再確認する。上記の提案事項が行われなければ、現在のイラクの悲劇的な状況は終わらない。4年以上の占領の経験から、破壊と宗派主義や民族主義による権力配分は政治情勢を混乱させ、治安状況を悪化させ、罪もない人々を何十万人も虐殺し、家屋を破壊し、何百万もの人々をイラク国内外に追い出すばかりである。占領軍が採用している同じ政策を実行すれば、イラク国民の運命を暗黒のトンネルと究極的破滅へとさらに追いやる以外にないだろう。

 IFCはイラク国民に呼びかける。こうした宗派主義の政党や勢力の罠に陥ることなく、さらに多くの殺害と追い出しに至る計略に引き込まれないようにしよう。それと同時に我々は呼びかける。イラク自由会議の旗の下に結集して占領軍を追い出し、人々を人間として認める民族主義でない政教分離の政府を設立しよう。

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