2007年09月14日発行1002号(2007年9月21日号)

ロゴ【6か国協議進展にとり残される日本 開かれる東北アジア非核化の道】

 9月1〜2日、米国と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の国交正常化を話し合う6者協議作業部会がジュネーブで開催された。焦点であった、朝鮮の核施設の年内無能力化などの合意が報じられている。朝鮮の核開発問題をめぐる6か国協議は紆余曲折をたどりながらも、05年9月に採択された「共同声明」実現のための「初期段階の措置」(07年2月策定)に着手するところまできた。

朝鮮半島非核化へ

 朝鮮による昨年7月のミサイル発射と10月の核実験強行は大変な衝撃と緊張をもたらしたが、「核」をめぐる問題を軍事ではなく外交で解決するという6か国協議の方向は少なくとも逆流しえない段階になっている。アメリカでのイラク戦争反対運動の高揚は中間選挙で共和党を敗北に追い込み、現政権からネオコン勢力を退場させつつある。この流れの中で、朝鮮との交渉を一時ネグレクトしていたブッシュ政権も協議のテーブルに戻らざるを得なくなった。朝鮮は寧辺の核施設閉鎖の準備に入ったことを公表している。

 6か国協議の進展と「共同声明」の実現は、朝鮮半島の非核化を創出する。それは朝鮮・韓国・日本からなる東北アジア全体の非核化と、軍事に依存しない集団的安全保障協定実現のベースともなる。

広がる非核地帯条約

 目をアジア全域に向ければ、2006年9月、「中央アジア非核兵器地帯条約」(セミパラチンスク条約)が実現している。カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、タジキスタンの5か国からなるこの条約は、地球上で5番目、北半球初の非核兵器地帯条約となった。

 同条約は、構成国の基本的義務として「いかなる手段、場所においても、核兵器あるいは他の核爆発装置について研究、生産、貯蔵、もしくは取得、保有、管理権を持つことを行わない」と明記し、IAEA(国際原子力機関)追加議定書への加盟を義務づけている点が特徴である。他国による艦船、航空機に搭載された核兵器の一時通過をそれぞれの構成国判断に委ねている点や、陸路の一時通過について許容の余地を残しているなどの弱さはあるが、親ロシア(カザフスタン、キルギス、タジキスタン)親米(ウズベキスタン、トルクメニスタン)という違いを乗り越えて非核地帯を実現した意義は大きい。

 すでに、95年に「東南アジア非核兵器地帯条約」(バンコク条約)が生まれ、98年にはモンゴル1国の「非核兵器地帯地位」が国連総会で認知されている。次の課題は、東北アジアでの実現―これがアジアと世界の流れなのだ。

市民が歴史の原動力

 この非核・平和の潮流の中で、日本政府は孤立を深めている。ここ数年小泉・安倍政権は、米国との軍事同盟強化にのみ奔走し、自衛隊を外征軍化した。6か国協議では「拉致問題優先」を口実にして日朝協議をつぶしてきた。「従軍慰安婦」問題など戦後補償は放置し、アジア各国はもちろん米議会からも厳しく批判されている。平和憲法を持ちながら軍事にのみ軸足を置き、平和的共存・共生に向けた何らのヴィジョンも持たないこの国は、歴史から取り残されつつある。

 憲法と国際法を実現・具体化する無防備運動はじめ地域から基地や戦争をなくすとりくみを広げてきた市民の闘いの力こそ、東北アジアの非核地帯を実現する真の原動力となるだろう。

  藤田 なぎ

(平和と生活をむすぶ会)

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