札幌市の無防備平和条例制定の直接請求署名が9月14日から始まる。北海道では初めての取り組みの意義について、無防備地域宣言運動全国ネットワークの中川哲也さんに寄稿してもらった。
北海道で初の無防備署名運動には全国からの注目が集まっている。
9月15日の「署名ガンバロー大集会」には参議院議員の山内徳信さんが駆けつける。元沖縄県読谷村長の山内さんが訴えるのは、「沖縄と北海道をむすぶ無防備運動」だ。9月29日は、積極的平和主義としての無防備運動を各地で講演している前田朗さん(東京造形大学教授)が駆けつける。10月6日には、自治体首長として初めて無防備条例に賛成の意見書を提出した前東京・国立市長の上原公子さんも応援に入る。
これほどの注目を集めるのはなぜか。
札幌市は10行政区をもつ政令指定都市だが、実は「北の軍都」なのである。
市政に口出す自衛隊
市内各所には、陸自北部方面総監部や陸自11師団をはじめ、かつての対ソ戦地上戦を念頭においた、「北方防衛」の自衛隊拠点施設がある。広大な真駒内駐屯地の11師団司令部正面玄関は、地下鉄南北線「自衛隊前」駅である。
軍都である札幌市で自衛隊の発言力は大きい。2003年末に第11師団からイラク派兵が明らかになり上田市長が「イラク派兵反対」を表明したとき、竹田自衛隊第11師団長は不快感を表明し、2004年1月には「イラク派兵反対への行き過ぎた宣伝・デモがあれば(雪まつりからの)撤収もある」と札幌市を恫喝した。それを受け札幌市は都市公園条例をたてに宣伝行動の退去を指導する方針を表明した。また、同年1月の新春恒例の札幌市主催挨拶会「互礼会」で上田市長が「君が代」斉唱をしないことを決めたため、自衛隊が不参加を表明した。これらは軍が言論や反対運動に介入したとんでもない例である。
一方、、日米軍事一体化の進行により、地上戦を想定した戦車隊を中心にした重厚長大な札幌の陸上自衛隊の存在意義は失われている。7200人規模の第11師団は、海外派兵部隊「中央即応集団」新設に伴い海外派兵強化の観点から、今後3600人規模に縮小される予定となっている(07/6/1防衛施設庁廃止法案可決、9月防衛省への統合方針とともに決定)。軍事戦略上の意味も失われていると言ってよい状態である。
市の平和政策と一致
こうした状況の中で、宇治市に続いて基地撤去を掲げて署名運動を行うことは、正面から自衛隊の存在意義を問い、イラク派兵時のように軍を言論や行政に介入させず、国民保護−地域での戦争体制をつくらせない運動として極めて意義が大きい。参議院選挙で安倍内閣の進める戦争国家路線にノーの審判が下された現在、「北の軍都」で基地撤去をかかげた運動を成功させることは、全国の平和構築の運動に限りない勇気を与えるものになるに違いない。
また、札幌市は1992年に、非核3原則・核兵器廃絶を盛り込んで平和宣言をし、さらに市長の施政方針で「…平和を愛し互いに尊び、多様な価値観を認め合って、すべての市民が平穏な暮らしを実現できる札幌でありたいという、市民一人ひとりの思いをかなえるため、国際平和を推進し、戦争に反対する立場を国の内外に示し、恒久平和を希求するとともに、年齢、性別、人種、思想や障がいの有無で差別されることのない街の実現を目指す。また、子どもが自律的にのびのびと成長・発達していけるように、子どもにとって大切な権利を保障するため『子どもの権利条例』の早期制定を目指す」(さっぽろ元気ビジョン)としている。こうした施政方針は、軍事力を増強し相互監視させる政府の戦争国家路線では実現できない。住民自治の力で、平和で軍隊のない、人権が尊重されるまちをめざす無防備地域宣言運動でこそ実現しうるものなのだ。
札幌の運動へ支援を
「無防備地域宣言をめざす札幌市民の会」は、人も金も足りない中で、署名運動をスタートさせた。全国からの物心両面にわたる支援を訴えたい。
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