2007年09月28日発行1003号

【1003号主張 / 即時撤退以外「出口」なし / IFC連帯で占領終結を】

「増派成功」のウソ

 ブッシュ米大統領はイラク政策テレビ演説(9/13)で、「増派の目的達成に成功した」として約3万人の撤収に着手することを表明した。

 これはもちろんイラク米軍の削減などではない。増派前の13万人規模に戻るだけだ。ブッシュは「私の任期終了後も米国の関与が必要」と、次期政権に長期駐留体制を引き継ぐ構えを示している。

 「増派成功」の根拠は、ペトレアス駐留米軍司令官が議会証言で挙げた「宗派間抗争の死者は12月より55%減」などの数字である。全くのごまかしだ。自動車爆弾の死者は除かれている。後頭部を撃たれた遺体は宗派間抗争の死者とされるが、前から撃たれると一般犯罪に分類される。そもそも「民間人死者はカウントしない」としていた米軍がいつその方針を変えたのか。「ペトレアスかビトレイ・アス(われわれをだます)か」と問う意見広告が米紙上に登場したのも当然である。

崩れ行くマリキ政権

 ブッシュ演説が米国民を納得させることはない。ニューヨークタイムズは社説に「出口なし、戦略なし」と掲げ、「ブッシュ氏はまたもイラクでの失敗の事実を認めることを拒否した」と切り捨てた。退役将軍までが「占領継続は軍人家族を引き裂き、世界における米国の名声を傷つけている」と声明を発している。

 イラクの現実そのものがブッシュ演説の虚構を暴く。

 宗派・民族間暴力は全土に拡散した。8月14日、北部のモスル近郊でクルド人を標的に500人を超える犠牲者を出した自爆攻撃はその典型だ。難民は国内に200万人以上、近隣諸国に250万人。実に5人に1人に上る。英国の世論調査機関ORBは、03年3月以来のイラク人死者122万人と推定する恐るべき調査結果を発表した。

 南部の大油田地帯バスラでは、シーア派各勢力の私兵集団が血で血を洗う抗争を繰り広げている。北部の産油都市キルクークを管轄下に置こうと狙うクルド地方政府は、8月末発生したコレラのまん延から市民を守るという基本的な行政機能さえ果たしていない。これまでもグリーンゾーン(バグダッドの米軍管理区域)内にしか存在しなかったマリキ政権は、9月15日サドル師派が与党から離脱し、名実ともに崩壊しつつある。

IFC、初の大会へ

 イラク国民の間では米軍撤退の声がさらに強まらずにはいない。米ABC、英BBC、NHKによる8月の共同世論調査がそれを裏書きする。

 「増派で治安は悪化」は70%。米軍駐留に「反対」「どちらかといえば反対」が合わせて79%と、前回05年11月の調査より14ポイント増えた。「米軍は今すぐ撤退すべき」は47%で、前回を21ポイント上回っている。

 今こそ、この声を結集するIFC(イラク自由会議)の飛躍の時だ。IFCは、石油資源を外国企業に売り渡す石油法の制定阻止のため結成された「反石油法戦線」の主要団体として、バグダッド中心部での石油法反対デモ(9/1)などの先頭に立っている。

 IFCの初めての大会が10月20日、イラク国内で開かれる。衛星放送サナテレビの視聴者拡大、自衛隊撤退の闘いでIFC連帯を強めよう。

       (9月17日)

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