2007年09月28日発行1003号

【公金詐取する談合根絶へ 課徴金強化と損害賠償を】

 大阪府枚方市の清掃工場の建設をめぐる談合事件に関与した現職市長が辞任。出直し選挙が9月23日投票の日程で行われている。

 選挙の争点は、談合の再発をどのように防ぐかにある。談合事件で自治体の首長が辞任するケースは、昨年の宮崎県、和歌山県、福島県と相次いでいるだけに、枚方市だけにとどまる問題ではない。

 枚方の談合事件は、辞任した市長が自らの政治的影響力を強化するために99年から計画。03年発注の第2清掃工場建設工事を大林組が落札するよう現職警察官を使って根回しした。大林組は予定価格が小さいことに難色を示し、結局17億円が増加、55億6千万円で請け負った。ゼネコンと政治家の利害が一致し実行された談合汚職事件だった。

 大手ゼネコンの談合体質は常態化している。大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手4社は05年12月、脱談合宣言を行いながら、直後の06年2月と6月に入札の行われた名古屋市地下鉄工事で、大林組が仕切り役となる談合を行い、総額200億円近い工事を分け合っているのだ。

談合は犯罪行為

 そもそも談合は、刑法および独占禁止法に違反する犯罪行為である。なぜ犯罪が平気で繰り返されるのか。

 それは、談合をすれば、より大きな利益を得ることができるからである。たとえ発覚しても、刑法では懲役2年以下または250万円以下の罰金であり、独禁法でも、課徴金は契約金の10%(10年以内の再犯の場合1・5倍)程度で済む。

 公共事業の予定価格は、国の定めた積算基準により計算される。企業は示された設計図などを基に実行予算を再計算する。長野県が04年に調査したところ、実行予算は予定価格の75%から80%程度であった。談合が指摘される工事の落札率は、95%前後といわれる。つまり、15%から20%が談合による不当利得といえる。

 そうであればたとえ1件の工事で10%の課徴金を科せられても赤字は出ない。また、すべての入札が摘発されるわけではないとすれば、談合をしないほうが損なのである。

 枚方市の場合は、落札率は98・4%、予定価格自体が水増しされた疑いもあり、不当利得は10億円以上といわれている。

 公共工事における不当利得とは、税金を過分に受け取ることである。公金詐取にあたる。しかし、国や自治体は、これまで談合による損害賠償請求にきわめて消極的だった。また訴訟となっても、裁判所が裁定する損害額は5%から7%。裁定に至る時間はきわめて長い。やり得感は否めない。

不当利得の3倍返し

 では、どうすれば談合を根絶することができるのか。

 談合罪の厳罰化、課徴金を引き上げることだ。談合が発覚すれば、大損害をこうむるようにすべきだ。

 独占禁止法が06年1月に改正された。課徴金が引き上げられ、公正取引委員会が独自で強制捜査に入れるようになったが、日本経団連は課徴金の引き上げに強力な抵抗を示し、当初の20%への引き上げ案を10%に修正、2年後の見直しを約束させた経過がある。現在その見直し作業が行われている。日本経団連は、課徴金と罰金の一本化を主張し、引き下げに向けた圧力を強めている。

 このことは逆に、談合の根を絶つには課徴金の強化が有効であることを示している。

 談合に対する日本の罰則がいかに甘いかを知るには、日本弁護士連合会が99年に行った米国の入札制度調査が参考となる。

 たとえば、刑事罰。罰金の基準は、談合による損害額の2倍の額だ。民事の損害賠償額は、損害額の3倍の請求が可能だ。つまり、談合が発覚すれば、不当利得の5倍を返納しなければならない。

 また、談合を摘発しやすくする方策として、政府に代わって内部告発者が損害賠償を請求できる仕組みがある。それにより、回収できた金額の15%から30%を報酬として弁護士費用とともに受け取ることができるという。

大手だけがボロ儲け

 談合に走るゼネコンなど建設業界は、少ないパイで共存を図る受注調整であり、必要悪との観念を捨てきれない。だが、それは大手ゼネコンを中心とした支配関係を維持するためのことだ。

 公共事業の市場は確かに縮小している。国・地方を含めた建設投資額は、06年で18兆2千億円。ピーク時の51・7%と半減している。業者数は1割減の程度だ。建設業界は数社の大手のもとに、数十社の準大手、中堅、中小零細と、50万社が経営規模に応じたいくつもの下請けの階層を形作っている。他の製造業と同じく、利益は上に吸い上げ、損害は下に押し付ける構造は変わりない。

 いま談合をしない「競争」入札では、原価割れの低価格入札が問題になっている。赤字のしわ寄せは、下請け・孫請けに押し付けられる。結果的に大手数社のシェアが拡大しているのである。

 企業の社会的責任として「安くてよいもの」つくる努力が常に求められている。公共事業を発注する側にも同じことが言える。政治権力と結んだ官製談合は、権力の腐敗を深化させ、税金を食い物にするものであり、企業の健全な生産活動を淘汰する三重の犯罪だといえる。談合を正当化する理由などひとつもない。

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