2007年10月19日発行1006号

【年収200万円以下が1千万人 元凶は新自由主義的構造改革だ】

 新自由主義的構造改革路線の下で、一握りの富裕層の収入増の一方で、貧困層は増大し続けている。

 国税庁による2006年民間給与実態統計調査では、昨年1年間雇用されていた民間労働者のうち、年収200万円以下の21年ぶりに1千万人を超えた(グラフ)。対前年比で42万人の増加だ。

 1年間の平均給与も434万9千円と前年比で2万円ダウンで9年連続の減少となっている。

 この調査から、年収200万円以下の人の総所得金額と、年収1千万円を超える所得金額の人の総所得金額を概算してみた。総給与所得者の22・8%を締める年収200万円以下の人の収入総額は16兆8500億円未満。これに対して、人数が5%に過ぎない年収1千万円超の人の収入総額は、26兆4700億円を優に上回る。その差は10兆円をはるに超える。(注:1人当たりの積算金額は、低所得者層は各階層の上限で、高所得者層は各階層の下限で計算したので、実際の格差は桁違いに大きいはずだ)

増える不安定雇用

 生活保護世帯も過去最多を更新した。06年度の1か月平均の生活保護世帯数は107万5000世帯。前年度に比べ3万4000世帯増えた(厚労省「社会福祉行政業務報告」)。保護開始の主な理由は「傷病による」43%に次いで、「働きによる収入の減少・喪失」が18%、「貯金等の減少・喪失」が16%と続く(06年9月)。

 生活保護の受給もできず住居がない、いわゆる「ネットカフェ難民」は厚労省の推計ですら5400人。その半数は非正規雇用者で、20歳台が最多の26%、これに50歳台の23%が続く。

 これらの貧困層をもたらしたのは、小泉・安倍両政権から続く、構造改革・規制緩和路線だ。

 派遣労働の拡大は際限なく不安定雇用を生み出し、偽装請負や日雇い派遣という労働者の使い捨てを恒常化してきた。完全失業率が微減といっても、非正規雇用が増加しているためで、企業は正規雇用から不安定雇用労働者に置き換えているのだ。

 厚生労働省による06年労働力調査では、正規雇用の従業員が前年比37万人増だったが、非正規雇用はこれを上回る44万人だ。

 07年6月の労働基準監督署の抽出調査では、最低賃金以下の給与で働かされていた労働者は調査した企業の従業員の1・2%、そのうち半数以上がパート・アルバイト従業員だ。

 労働者が低賃金にあえぐ一方で、大企業は史上空前の営業利益を更新し続けている。

06年度の財務省の法人企業統計調査によると、資本金10億円以上の企業の経常利益は前年度比11%を超え、5年連続の伸びとなっている。

 所得が下がっているのは、中小下請け企業の正規雇用労働者であり、非正規雇用の労働者だ。

「改革」続行公言する福田

 一部富裕層への所得の集中と一部大企業への利益の集中をもたらす、新自由主義的構造改革を転換させない限り、貧困問題は解決しない。

 福田首相は、所信表明演説の、いわゆる「格差問題」への対応として、「改革の方向性は変えずに、生じた問題には一つ一つきちんと処方箋を講じていくことに全力を注ぎます」と述べ、あくまで「改革」の基本路線を継続することを公言した。そもそも、福田は構造改革路線を強引に進めた小泉内閣を官房長官として長年支えた人物だ。そして、安倍内閣ですら国会提出を見送った「残業代ゼロ」法案を「家族団らん法案」「早く帰ろう法案」などと言い換え、推進しようとしている舛添を厚労相に再任している。

 とはいえ、権力の側もヤマト運輸のサービス残業の摘発や偽装請負が発覚したキャノン・御手洗会長(日本経団連会長)の国会証人喚問の動きなど、公然たる違法行為については何らかの対応をとらざるを得なくなっている。

 新自由主義政策に根本的なノーをつきつけ、不安定雇用労働者の組織化と均等待遇、最低賃金1200円実現への運動を強化することで展望は開ける。

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