2008年06月06日発行 1037号

【1037号主張 今こそ無防備地域運動だ/住民自治で軍隊のない地域を】

平和をつくる住民意思

 5月25日、川崎市・兵庫県尼崎市で取り組まれた無防備地域条例制定のための直接請求署名運動が1か月の署名期間を終えた。川崎3万1457筆、尼崎1 万4671筆(5月25日現在)と、両市とも直接請求に必要な法定数(全有権者数の1/50)を大きく上回り、条例制定を求める市民の意思を示した。

 無防備地域条例制定運動は2004年の大阪市から数えてこの5年間で北海道から沖縄まで全国24自治体に広がり、さらに取り組みを表明する地域が続いて いる。

 ここには、小泉政権から急速に進められている戦争国家づくりへの国民の痛烈な批判がある。民意を無視したイラクへの自衛隊派兵や洋上給油活動。沖縄の少 女暴行や横須賀のタクシー運転手殺害など相次ぐ米兵犯罪。自衛艦「あたご」による漁船撃沈は、軍隊が平時から住民の生命を脅かす危険な存在であることを明 らかにした。軍事費が約5兆円にも膨らむ一方で強行された「後期高齢者医療制度」導入など医療・福祉関連予算の削減は、戦争国家と軍隊による殺人に等し い。

民意殺す政府・地方議会

 今、福田政権の戦争国家づくりへの怒りが、住民意思で平和な地域をつくり出す無防備地域条例への期待の一筆となって運動を拡大している。

 しかし、多くの市民がその実現を求めて直接請求を行なった無防備地域条例は、これまで各地方議会で否決されてきた。無防備条例だけではない。8月にも予 定される米海軍横須賀基地への原子力空母配備の是非を問う横須賀市住民投票条例制定直接請求も、約5万筆の署名が集まったが市議会で否決された。

 背景には国家権力によるむき出しの地方自治破壊の圧力が存在している。2年前、山口県岩国市で行なわれた米空母艦載機の岩国移転の是非を問う住民投票で は、全有権者の過半数を超える圧倒的多数の住民が移転反対の意志を示し、「国防は国の専管事項」とする政府の立場を打ち破った。政府はこれに対し、米軍再 編交付金や新庁舎建設の国庫補助金を凍結するという暴挙で住民意思をねじ曲げようと画策。岩国市を見せしめに全国の自治体に、「国防」に異議を唱える自治 体は何が何でも締め上げることを示し、市民の生命と財産を守る地方自治の責務を否定したのだ。

平和的生存権の行使を

 航空自衛隊のイラク派兵を違憲と断罪した名古屋高裁判決(4/17)は、「平和的生存権」を憲法上の権利として認めた。そして、戦争準備行為による生 命・自由の侵害や恐怖、戦争遂行への協力を強制される場合、市民はこれを拒否できることを明らかにした。危機感を持った政府は「傍論にすぎない」との答弁 書を閣議決定したが、追いつめられているのは福田政権だ。

 無防備地域運動がその根拠としているジュネーブ条約第1追加議定書の第58条は、居住地域の近くに軍事基地を置くことを許していない。地方自治への圧力 が強められている今こそ「平和的生存権」を行使し、地域から基地と軍隊を追い出す無防備地域条例制定運動を全国に広げ、住民自治の力で戦争国家づくりをと めよう。川崎市、尼崎市で条例制定を実現しよう。

       (5月25日)

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