2008年06月13日発行
1038号
【イラク戦争で大儲けの石油メジャー】
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原油高はイラク戦争から
今年1月に1バレル100jの大台を超えた原油価格が、5月22日に一時135・09jまで上昇し、最高値を塗り替えた。昨夏以降の原油価格の異常な高
騰は投機マネーの流入によるものだが、原油価格が上昇し始めた発端はイラク戦争だ。
ノーベル賞経済学者のスティグリッツ・コロンビア大学教授は、最近出版した共著『3兆ドルの戦争』(邦訳は『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』)の
中で、「石油価格の上昇は、(イラク戦争の)開戦とほぼ同じに始まった。そして、戦争が長引くにつれ、どんどん高値を更新していった」と述べ、開戦前の原
油価格1バレル20jと現在の価格(95〜100j)との差額の半分約35jをイラク戦争の影響による上昇分と試算している。そして、アメリカ全体や日本
を含む石油輸入国の経済が高い石油価格に苦しめられる中、石油大手は開戦以来、右肩上がりの収益と株価を享受している、と指摘している。
実際、03年から07年にかけて石油5大メジャー(エクソン・モービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP<英国石油>,シェブロン、トター
ル)は、売上高を約1・6倍に、利益を約2倍に伸ばしている。
異常な高騰で大儲け
しかも、今年に入ってからの異常な高騰により、各社はさらに大儲けをしている。08年1〜3月期決算によると、エクソンが前年同期比17%増の108億
9千万j(約1兆1300億円)の純利益をあげたほか、シェルは売上高が56%増の1143億j、純利益が25%増の90億8千万j、BPも売上高が
43%増の877億ドル、純利益が63%増の76億2千万jと増収増益を達成した。石油関係者は「原油価格が1j上がるたびに、エクソン社の収益は四半期
あたり1億2500万j(約130億円)上昇するんです」と語っている。
米国のポールソン財務長官は今回の原油高騰について、「供給懸念が原油高騰を招いた」と責任を産油国に押しつけている。これは、投機マネーの規制や原油
価格の統制に議論が発展するのをかわそうとするもので、ブッシュ政権の後ろ盾の一つである石油メジャーの立場に立ったものだ。
もともとイラク戦争自体が世界有数の埋蔵量を誇るイラクの石油を支配するために仕掛けられた戦争だ。
イラクの石油支配狙う
ブッシュ政権は占領の総仕上げとして、石油法の成立を急ぐようマリキ政権に圧力をかけている。昨年2月に閣議決定された石油法案に対し、イラク労働者・
民衆が強く怒っているのは、イラクの石油の大半が石油メジャーを中心とする外国資本の手に渡る内容になっているからだ。イラク国営石油は生産中と生産開始
間近の油田(20か所前後)を占有するのみで、残りの未開発油田(60か所前後)を外資に開放することになっている。外資は生産分与協定(PSA)を結び
12・5%のロイヤルティ(採掘権料)を払うだけで、石油の生産から販売までの全過程を支配できるというとんでもない代物だ。
英国のNGO「プラットフォーム」のマティット共同代表の試算によると、PSA方式を採用した場合、イラクが被る損失の累計は、今後数十年で現在のイラ
クの国内総生産の6倍に相当する可能性があるという。
石油法に対しては、イラク自由会議(IFC)や石油労働組合を中心に広範な勢力を結集する反石油法戦線が結成され、さまざまなキャンペーンや抗議活動を
展開し、石油法の成立を阻止している。反石油法戦線の闘いを支援し、国際連帯の力で石油メジャーとその利益を代弁する米ブッシュ政権の横暴を打ち破ってい
かなければならない。
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