2008年07月11日発行 1042号

【府民・労働者に犠牲強いる橋下「行革」 大阪府=「破産会社」は大うそ】

根拠なき千百億円削減

 大阪府の橋下知事は6月24日、2008年度本格予算案を発表した。「大阪維新プログラム」(6/5発表)の財政再建案を受けたもので、「収入の範囲内 で予算を組む」として、当初から主張していた1100億円の歳出削減を盛り込んだ。同日の記者会見では、「ものすごい大きな(財政再建の)道筋を付けられ たと自画自賛してしまう」と胸を張った(6/25毎日)。
 橋下知事は1100億円歳出削減の必要性を「(大阪府財政は)財政再建団体に転落した夕張市と同レベルにある」として、「大阪府は破産会社だ」と叫んで きた。果たしてそうだろうか。

 まず、夕張市が発行した地方債残高は149億円(05年度決算)で、観光会計の赤字や長期借入金等を加えると実際の返済額は632億円となり、標準財政 規模の14・4倍。実質公債費比率(公債費による財政負担の度合いを判断する指標)は、28・6%だった。

 大阪府の場合は、財政規模に対する府債の割合は3・5倍で、今とりたてて問題とされる状況ではない。実質公債費比率については、図‐1のとおり。これは「大阪府行財政 改革プログラム(案)06年11月」の資料である。それによれば、06年では15・6%で、夕張市とは比較にならない。この数字は全国平均(14・7%) よりは高いが、北海道(20・6%)、兵庫県(19・6%)よりは低く、東京都(15・2%)と同レベルであり、全国では8番目となっている。

 だが、橋下はしきりに地方財政健全化法(09年4月施行)を持ちだし、「実質公債費比率が25%を超えると財政健全化団体となり、35%を越えると財政 再生団体(従来の財政再建団体のこと)になる」と、危機感を煽り立てる。

 地方財政健全化法とは、自治体の財政赤字を深刻化させてきた政府の責任を不問にし、歳出削減と住民負担増で金融機関に対する債務返済を最優先させるとい うしろものだ。その同法に基づいたとしても、大阪府の現状は「財政再生団体」(一般にいう「破産財政」)とはかけはなれている。さらに、大阪府自身が作成 した前出資料でも、年間400億円の歳出削減という前提付きではあるが、実質公債費比率は08年を境に改善の見通しが示されていたのだ。

 一連の事実は、1100億円歳出削減に根拠がないことを示している。橋下の「大阪府は破産会社」とは、府民生活や職員に犠牲を押し付けるための大うそな のである。

「収入の範囲」のごまかし

 橋下知事は本格予算案を「収入の範囲内の予算」とし、府民の切実な生活要求を切り捨てた。しかし、地方自治体の本旨(目標)は「住民の福祉の増進」にあ り(地方自治法第1条の2)、決して歳入の範囲がすべての前提ではなく、財政再建のためなら何をしてもいいなどとはならない。

 しかも、この「収入の範囲」論には大きなごまかしがある。橋下は、収入が減っている原因を明らかすることもなく、それへの手立てを全く打たない。単に収 入減の現状を追認するだけなのだ。

 確かに府税収入は減少しているが、それは法人2税(法人事業税、法人府民税)が前年度より586億円減少したことによる。

 法人2税による収入が最も多かった89年には、府税収入約1兆4千億円に対して法人2税は8352億円(約60%)あったが、08年度には5374億円 に減少し、府税収入に対する割合は38%にまで下がっている。

 一時、「景気後退」=企業収益低下はあったものの、ここ数年は大阪の大企業も過去最高の収益を更新し続けている。それが税収増に反映しない原因は、主要 には、大企業優遇の法人2税の減税(税率の変更)であり、不良債権処理を行った大手銀行などが特別損失を計上して法人2税を免れたからだ。とりわけ銀行は その後、04年には損失額の繰越を5年から7年に延長した。このことによって大手銀行は法人2税の大半を免れている。

 府税収入の減少はこうした理由からだが、橋下は税金逃れをしている大手銀行には一言も納税要求をしない。「収入の範囲内」とは、大企業の税金逃れは放置 したまま、収入がないので予算を削ると言っているに過ぎない。

負債作った大型事業失敗

 大阪府の府債残高は、90年には1・8兆円であったのが、99年度までのわずか10年足らずの間に一気に増加し、08年度には約5兆円にまで膨らんでい る(図‐3参照)。その原因は、政 府の景気浮揚事業として行った関西空港関連事業のりんくうタウンなどの大型プロジェクトの失敗による借金である。

 りんくうタウン事業では、1700億円を越える赤字を出した。「大阪維新プログラム案」では、赤字の原因については「バブル後も関空開港への過度の期待 で見直しが遅延」「正確な経営状況の把握が遅延」という一般論にとどまり、主体的な原因分析も対処方針も示されていない。プロジェクトのために府債乱発を 促してきた国への責任追及も一切ない。

 これら大型プロジェクト失敗による巨額の負債が今日の大阪府財政を揺るがしている元凶だが、橋下知事は事業のごく一部を先送りするだけ。それどころか、 当初は国に要求するとしていた「関西空港振興の府負担金減額」も簡単にひるがえし、「府だけが負担しないというのは難しい」という始末だ(6/26産 経)。

 巨額の赤字を垂れ流しているりんくうタウン、箕面森町、泉佐野コスモポリタン事業などを凍結し、打ち切ることが必要だ。国土交通省との間で問題となって いるダム建設についても、安威川ダム・槇尾川ダム(住民からは強い批判の声が上がっている)に100億円近い事業費を付けているが、関西空港関連も含め国 の事業の府負担を拒否し、公共事業費こそ削減するべきだ。

 また、現在残っている府債の引受先の5割近くは民間銀行といわれ、年間300億〜400億円もの利子が支払われている。過去最高の収益を上げながら税金 を払わず、利子だけは大阪府から取り続ける―こんなデタラメが許されていいわけがない。

 大型プロジェクト事業を廃止するとともに、根本的には地方財政健全化法による地方財政政策の転換を求め、莫大な借金を指示してきた政府と、事業や利子で ぼろ儲けしてきた大企業・銀行にこそ責任を取らせなければならない。

7月府議会要請行動へ

 08年度本格予算案は、府民、とりわけ老人・障害者・母子家庭などの社会的弱者への支援や教育・平和・人権・女性施策などへの公的支援を削減し、「自己 責任」を強要している。また、公務員労働者の賃金を大幅カットし、教務事務補助員などの最も弱い立場にある非正規雇用労働者を346名も解雇するものだ。

 7月1日から本格予算案審議の臨時大阪府議会が始まる。府民・労働者の怒りは広がっており、7月1日、15日の「許すな橋下行革!実行委員会」などによ る府議会要請行動をはじめ、切り捨てられる当事者たちを先頭に府議会包囲の行動が取り組まれる。

 府民・労働者に犠牲を押し付ける橋下「維新プログラム」―08年度本格予算案は撤回しかない。
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