2008年07月11日発行
1042号
【障害者の雇用拡大は全体の労働条件改善に 「河内谷さんとともに視覚障がい者の雇用を実現させる会」結成 不採用通知
の山に怒り】
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2006年国連総会で採択された「障害者の権利条約」が今年5月に発効した。日本政府は署名はしたものの、まだ
国会での批准を残している。しかも、グローバル企業が労働者の使い捨てに走る中で、障害者、特に視覚障害者の雇用は厳しい状況にある。そんな中で、全盲の
河内谷収(かわちや・おさむ)さんとともに、視覚障害者の雇用を実現させようと、6月28日、会が結成された。その名も「河内谷さんとともに視覚障がい者
の雇用を実現させる会」。早速、会員募集が始まった。
「どうせえというのか」
河内谷収、31歳。生まれたときから全盲ながら、猛勉強が実り京都精華大学合格。さらに同大学院修士課程を修了。04年4月から1年間、視覚障害者の就
職支援を行う京都ライトハウスで相談員をつとめた後、3年間就職活動に専心する。職業訓練を重ね、努力して身につけたコンピューター技能を生かせる事務の
職場を求め、各種企業、自治体の採用試験にのぞんだが、手にしたものは不採用通知の山だ。ほとんどは書類選考で落とされた。
ハローワークの窓口では相手にもされなかった。「視覚障害者で働けるところはない」と突き放されたこともあった。そんな中、一昨年、昨年と大阪府の障害
者採用試験の一次を突破。面接、論文試験の対策を練って2次試験に挑戦するも、2年続けて不採用だった。
まだ、足りないものがあるというのか。もっとコンピュータ技術を磨けと言うのか。「これ以上どうせえというのや」。やり場のない怒りが爆発する。
河内谷さんの就職活動を支え、今回「会」の事務局長になった石田哲夫さんはいう。「こんなことをいくら繰り返していても、問題の本質的な解決にはならな
いのではと彼と話し合った。運よく彼が採用されたとしても、同じような境遇にある視覚障害者は放置されていく。ならば、視覚障害者の雇用を拡大することに
取り組もう」と「会」結成となった。
視覚障害者の仕事は、古くから、あんま・マッサージ、鍼、灸の三療と呼ばれる分野にほぼ限定されてきた。そのため、それ以外の分野に就労機会を広げる取
り組みが遅れた。厚生労働省は昨年の通達で、三療以外の就労拡大を指示しているが、状況は変わらない。逆に、この三療の分野にも晴眼者(目の見える人)が
進出し、視覚障害者も容易には職に就けない状況が生まれているという。
「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、企業に常用労働者の1・8%(特殊法人・国・自治体では2・1%)の障害者雇用を義務づけている。雇用のた
めの施設改善や研修などの助成金制度もある。だが未達成企業は、1人につき月額5万円の納付金を支払えばよいことになっており、昨年6月時点で、実雇用率
は1・5%程度にとどまっている。
働く機会を増やせ
なぜ障害者雇用がすすまないのか。「雇用による企業負担は、そんなに大きくはない。非正規雇用をこき使い正社員を過労死させるような職場環境が温存され
ていることが問題だ」と支援者からの発言があった。障害者の雇用を拡大する運動は、一般労働者の労働環境や労働条件の改善にもつながるものだ。
河内谷さんには、ヘレン・ケラーのような特別な人にしか、就職はできないのか、そうであってはいけないはずとの思がある。「特別な努力をしなくても働け
る社会システムがつくりたい」。これまで、人一倍の努力をしてきた彼の願いだ。
「会」の代表についた全盲の田中清治さん(53歳)はこうあいさつした。「私は30年間、あんま・マッサージをしてます。今では国家資格も短期間に取れ
るようになりましたが、私のころは長い時間かかりました。視覚障害者の働く場は、あんま、鍼、灸以外では音楽関係や教員など少数ありますが、限られていま
す。障害者の働く機会を増やすよういろんなグループと協力していこう」
8月2日から京都で開催される全交大会の2日目に他団体などとの交流が予定されている。会の問い合わせ先は、075−622ー6241
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