2008年11月21日発行 1060号

【奨学金返済の猶予申請へ 沖縄なかまユニオンが学習会 集団申請で扉を開ける】


 「それでは、10月27日のワンデイアクションに向けて、奨学金返済の猶予申請をしたいと希望される方はおられますか」―司会の沖縄なかまユニオン・比 嘉勝子代表が尋ねると、2人の女性がゆっくりと手をあげた。

 10月19日、那覇市内で開催された沖縄なかまユニオン学習会(第3回会合)には7名が参加、奨学金返済や延滞金の支払いで困っているとの相談が次々と 参加者から寄せられた。

切実な訴えつづく

 「私が7月7日に東京に行って日本学生支援機構に申し入れをした時に取材に来ていた日本テレビが、奨学金問題のドキュメントをつくって、沖縄でも11月 5日に放送されます」と比嘉さんのサプライズ発言で学習会は始まった。「奨学金返済で困っていませんか」という、できたばかりのリーフレットを全員で読み 合わせ、参加者からこの学習会に来た経緯や自己紹介が順に語られる。

 Aさんは失業中。なかまユニオンに初回から参加し、「今度の申請はぜひ提出したい」と語った。Bさんの場合は、対象は姉の子だ。「姉は母子家庭で2つの 仕事をかけもちで働いても生活が苦しい。めいは専門学校に通っていたが、卒業と同時に250万円の返済が始まった。契約社員でとても支払えない」と厳しい 実情が語られる。続いてCさん。「大阪の専門学校に通っていた娘が、卒業して沖縄に帰ってきたが、サラ金を借りないと返済できない。どうしたらいいか」

 前回10月の学習会でも、90万円もの延滞金の支払いで困っている例や娘が精神的な病気になってしまったなどの話が出たが、顔も知らない初めての人の前 で告げられる参加者の訴えは切実だ。

 沖縄の2紙(琉球新報と沖縄タイムス)は10月10日「奨学金滞納者を金融機関に通報」と報じた。さらに28日には「奨学金延滞 半減めざす」と延滞状 況の改善が進まない大学名の公表など機構側の発表を伝えている。

 OECD(経済協力開発機構)が、05年の国内総生産(GDP)に占める教育への財政支出割合を調査した結果、日本は先進国28か国中最下位だった。こ の国の教育に対する「政策」は最低だ。給付による無償の奨学金制度や無利子の制度も、自民党政府による20年来の教育費圧縮路線で消え失せ、教育ローンと 化した奨学金制度は「貧困ビジネス」となって多くの若者とその家族をいじめ過酷な状態に追いやっている。

12・15アクションへ

 いま声をあげなければ変えることはできない。

 10月27日東京で取り組まれたワンデイアクションには、比嘉さんら沖縄側からの参加は果たせなかったが、日本学生支援機構に要請した交渉団の成果は大 きい。猶予申請の基準が都道府県ごとに違うこと、一般猶予(失職・病気・被災およびその他の事由による猶予)については1年ごとの更新手続きで最大10年 間猶予、すでに滞納となった過年度分の延滞金も減免対象となることがわかり、延滞金の減免に関する基準(施行規則)を公表させるなど、閉ざされていた返済 困難者への救済方法の扉が一つひとつこじ開けられるようだ。

 沖縄なかまユニオンは、11月23日に4回目の会合を開く。ワンデイアクションの報告や日本テレビのドキュメントの上映を予定している。そして12月 15日の次回ワンデイアクションに向けては、さらに集団申請をすすめるため12月7日、「奨学金返済ホットライン」を那覇市内で開設し、返済に困っている 沖縄の若者に直接相談窓口を開く。子どもたちがお金の心配なく学べる世界の常識が通じる日本社会をめざして。 
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