2008年11月28日発行 1061号

【1061号主張/新テロ法延長は阻止できる/人殺しの無償給油やめろ】


早期成立路線に狂い

 海上自衛隊がインド洋で給油活動を継続する新テロ特措法延長案早期成立のシナリオは狂い始めた。麻生の解散引き延ばしにしびれを切らした民主党が「対決」路線に転じたためだ。

 だが、民主党も自衛隊海外派兵推進であり、実質的な与野党大連立状況に変わりはない。小沢代表は「国連決議による自衛隊海外派兵・武力行使は可能」とする論文を出し、民主党の対案は「停戦合意があればアフガニスタン本土への自衛隊派遣」というとんでもないものだ。

 派兵翼賛国会は、参考人招致した田母神(たもがみ)元空幕長を追及せず、テレビ中継もしないまま自説を開陳させ、侵略・改憲正当化の政治目的を達成させ てしまった。公然と侵略を賛美し改憲をとなえる武装集団のトップを懲戒しない―これはクーデターに等しい。田母神の提言に基づき03年度から自衛隊に「国 家観・歴史観」の講義が設けられ、現在も陸海空3幹部学校の合同統合教育として侵略正当化が続けられている。

 日本の派兵大国化はとっくに危険水域に入っている。派兵が人殺し・破壊であることを暴き、即時撤退運動を強めなければならない。

パキスタンへも攻撃

 自衛隊の給油で米軍は何をやっているのか。

 アフガニスタン南部カンダハル州で11月3日、米軍機が民家(結婚式会場)を空爆し、子どもや女性を含む住民37人を殺害した。カルザイ大統領はオバマ 米次期大統領に「空爆による住民の犠牲を終わらせる」よう強く求めた(11/5)。その直後、西部バドギス州で米軍空爆があり、市民約30人が死亡した。 アフガニスタン内務省によると、空爆で死亡した民間人は今年250人を超え、過去最悪のペースとなっている。

 米軍は武装勢力タリバン掃討を名目に隣国パキスタンへも越境攻撃(空爆)し、市民の死者が拡大している。パキスタンのギラニ首相は主権侵害に抗議し「米 次期大統領は越境攻撃の即時停止を」と声明した(11/3)。その後も空爆で市民の犠牲は拡大し、パキスタンのテレビは「オバマ次期政権はブッシュより越 境攻撃を強めるとのメッセージだ」と報じた。

 アフガン、パキスタン両国民の反米感情はきわめて強くなり、タリバン支持回復の背景となっている。米国のアフガン占領は完全に失敗した。

戦争なくし貧困克服へ

 武力では解決しないことが明らかとなり、アフガン政府はタリバンとの和解交渉を進めている。パキスタン政府・軍は、対話による政治的解決が必要との結論 に達し、パキスタン国会は対テロ戦の見直し決議を全会一致で採択した(10/22)。アフガン、パキスタン両政府が対話路線にかじを切りつつある今、米・ 日は対テロ戦争を続ける「名分」を失っている。

 イラク占領も破たんし、占領軍撤退の流れが定着している。インド洋での給油活動を即時終わらせ、自衛隊を撤収させよう。6年の無償給油とそのための派兵 費用は公表分だけで600億円に及ぶ。この予算を人殺しと破壊ではなく、金融恐慌の被害を受ける労働者・国民の生活を救い貧困と不安定雇用をなくすために 使わせよう。

        (11月18日)
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