2008年11月28日発行 1061号

【狙い撃ちの「雇い止め」 キヤノンを提訴した宮田裕司さん 「泣き寝入りしない」】

 キヤノン宇都宮光学機器事業所の期間社員として働いていた宮田裕司さんは今年8月末、「ミス」を理由に雇い止めされた。宮田さんはこれを不当とし、東京地裁に地位確認を求める仮処分を申請。11月6日の第1回期日には、支援者ら約20人が集まった。

 「これは単純な契約期間満了による雇い止めではない、組合員を狙い撃ちにした不当労働行為だ」と、支援者は一様に怒る。

組合員を狙い撃ち

  宮田さんは06年3月、派遣会社アイラインの派遣社員としてキヤノン宇都宮光学機器事業所で働き始めた。同年5月、契約は”派遣“から”請負“に。しかし 実態は、キヤノン社員が現場で指揮命令をし、請負会社社員と正社員が混在して働く明らかな偽装請負であった。キヤノン非正規労働者組合は同年10月、栃木 労働局に偽装請負を内部告発。1年という異例の調査期間後に栃木労働局はこれを認定するが、是正指導を恐れたキヤノンはその直前に、請負社員全員の直接雇 用を申し入れた。

  直接雇用とはいえ、最長2年11か月の期間社員だ。正社員化を希望していたが、やむを得ず46人が期間社員として入社した。しかし、その後も数か月単位で の契約更新と不安定な地位は続く。内部告発した宮田さんは、上司からの監視とパワーハラスメントを受けた末、今年8月末に雇い止めを通告された。

  第1回期日で宮田さん側は、期間社員として入社する以前の偽装請負時代の労働実態も審理するよう主張した。

  これに対し、キヤノン側は直接雇用以後のみをとらえて通常の契約期間満了による雇い止めにすぎないと反論。請負については、契約に基づきアイラインが独立 して製造過程の一部を請け負っており、キヤノン側は何ら請負社員の労働実態を把握していないと虚偽の主張を行なった。さらに、宮田さんの工具製造業務は習 熟を要する業務ではないにもかかわらず、習熟しようとせずミスを繰り返したと、雇い止めの「合理的理由」を主張した。

  宮田さんは「予想していた通りの答弁内容。組合員の中で狙い撃ちされた感で、正直ムカついている。これまでも何度か不当な雇い止めにあってきたが、もう泣 き寝入りはしたくない。今回は支えてくれる皆もいる」と決意を述べる。「今日ようやく雇用保険がおりた。心折れないように生活していきたい」と苦しい生活 を強いられている胸のうちを語った。

「派遣法は廃止だ」

  報告会には多くの支援者がかけつけた。松下プラズマディスプレイ偽装請負裁判原告の吉岡力さんは「内部告発した人が雇い止めされるということが横行してい る。派遣社員の切り捨ても始まっている。宮田さんの言うように泣き寝入りしてはいけない。一緒にがんばろう」とエールを送る。鉄建公団訴訟原告団の酒井直 昭団長は「地方労働委員会の形骸化、労働者の立場に立たない司法、こういう社会を作る始まりとなったのが、国鉄分割民営化。宮田さんと共に頑張りたい」。

  首都圏なかまユニオンの伴幸生さんも「派遣法改正案が出たが、さらに規制を緩和する内容。派遣法は廃止するしかない。吉岡高裁判決が指摘した職業安定法第44条に立ち返り、当たり前の、期間の定めのない直接雇用に立ち返っていかないといけない」と訴えた。

  第2回期日は12月18日。

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◆お詫びと訂正 1059号6面で大西真波さんの卒業した年は2007年の誤りでした。訂正しお詫びします。
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