2008年11月28日発行 1061号

【労働者派遣法は廃止しかない インタビュー 100万人署名進める吉岡力さん】

 ” 派遣切り”など労働者の使い捨てが横行する中で、元凶である派遣法の廃止を求める声が広がりを見せている。松下偽装請負訴訟の原告吉岡力(つとむ)さん は、労働者派遣そのものを断罪した大阪高裁判決を確定しようと最高裁に向けた全国100万人署名に取り組んでいる。わずか2か月あまりで3万筆に迫った。 署名協力者は全国各地、世代を超えて広がっている。12月15日に再度最高裁に提出する。署名の手ごたえ、思いを聞いた。(11月15日、まとめは編集 部)

 自分一人の闘いじゃない

Q、全国各地に署名協力者が広がっているようですが。

A、私自身は、北は北海道から、西は高知、広島あたりまで出かけていきました。国鉄闘争で作り上げられたネットワークなどを紹介していただき、国労旭川闘争団や北海道の教組など多くの署名を寄せていただきました。すごい人脈だなあと感心してます。

 自身の署名もさることながら、訪問先で報道されていないような争議を見聞きし、励まされています。

 たとえば、京都ではNTTに三重派遣され、賃金のピンはねにあっている人、静岡の王子特殊紙を相手に闘っている人などと出会いました。

 三重県桑名市では、トヨタ自動車の下請け会社光精工で、期間工として働いていたブラジル人労働者80人が解雇撤回を掲げてストライキをやったんです。見事、撤回させました。名古屋ふれあいユニオンは、組合員の6〜7割が外国人労働者だそうです。

 キヤノンの偽装請負を告発した宮田さんも個人争議でがんばっています。「これ以上泣き寝入りしたくない」と記者会見で語っていました。この言葉は、本当に私たちの気持ちを代弁したものだと思います。

 11月8日、9日と「全国クレサラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会in秋田」に行ってきました。その場で、520筆の署名が集まったのですが、クレ ジットやサラ金被害者を支援する弁護士さんが大変熱心に協力していただきました。持参した署名板が足りずに、調達までしていただきました。埼玉で偽装請負 の告発で2人が解雇されてしまいましたが、その支援の弁護団の中にサラ金被害を扱っている弁護士の人がたくさん入っています。

 サラ金被害と非正規不安定雇用の問題は同じ背景があるととらえる動きが出てきていると感じます。

松下工場前で署名

Q、街頭署名での反応は。

A、大学生とか高校生が署名してくれることに驚きました。格差社会、ワーキングプアと報じられるようになって、これから社会に出る人にとっては自分のこと だと感じるのでしょう。大学に講演に出かけたこともあります。署名用紙がほしいと取り組んでくれました。年配の人は、自分の子や孫の問題として署名してい ただいてます。本当に幅広く協力をいただいています。

 私自身びっくりしたのは、松下の尼崎工場の門前で署名行動をしたとき、期間工の人が2人も署名をしてくれたことです。最も会社の監視が厳しい場所で、吉岡の署名をすることは大変なことです。

 10月に要塞のような最高裁の建物に約2万7千筆の署名を持ち込んだのですが、提出するとき、これまで自分のことのように署名を集めていただいた人たち や署名に協力いただいた人の顔が浮かんできました。この闘いは、自分一人の闘いではないんだ、絶対負けられないなと思いました。

厚労省は犯罪組織か

Q、厚労省との交渉はどうでしたか。

A、まったく話になりません。厚労省自身が犯罪組織ではないかと思えるほどです。以前、大阪のほうで厚労省から派遣会社への天下りはあるのかと質問したこ とがあります。「答えられない」と、きっぱり否定できないわけです。きっとあるに違いない。だから、まともに指導できないのではないかと思います。今後、 こんな点もただしていきたいと思っています。

 それにしても、交渉の窓口にはまともに対応ができる職員が出てこない。非正規ネットでおこなった交渉の時には、国会議員も一緒に出向いているのに。国民を馬鹿にしているとしか思えないですね。

 10月のワンデイアクションのときも、大阪府の非正規職員解雇問題で、労基法さえ適用されないような職が職業安定所で紹介されていることについておかしくないのかとただしても、問題ないと答える。職安は、安定した職を斡旋するところではないのかと言いたいですね。

来春の解雇阻止へ

Q、松下内部からの声が届いているようですが。

A、実は、昨日松下の期間工の人から相談を受けました。来年2月で解雇を言われています。(続く)

   ※  ※  ※

・吉岡争議とは
松下プラズマディスプレイの偽装請負を告発し、不当解雇された。08年4月25日、大阪高裁で解雇撤回の全面勝利。判決は、偽装請負を労働者供給事業を禁じた職業安定法44条と中間搾取を禁じた労働基準法6条違反としている。

【問い合わせ先等】
ウェブサイト
http://www.yoshiokakai.org/index.html

吉岡さんを松下電器の職場に戻し、人権侵害・不当な雇い止めをなくす会(通称:吉岡会)
電話:06-6242-8130
FAX:06-6242-8131
メール:panasonic_syokubasoudan@yahoo.co.jp
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