2008年12月19日発行
1064号
【試用期間中の解雇撤回へ 本田福蔵君が大阪地裁に提訴 若者の未来を閉ざすな】
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「派遣切り」や内定取り消しが横行する中で、一人の青年が「若者の未来を閉ざすな!」と立ち上がった。本田福蔵(よしぞう)君(23歳)で、試用期間中の解雇撤回を求めて、12月2日大阪地裁に提訴した。
研修中に解雇通知
2日早朝、大阪市北区の日本基礎技術(株)本社前で出勤する社員に1枚のチラシがまかれた。
「若者の未来を閉ざすな!本田君の解雇を撤回せよ 試用期間中といえども解雇は自由ではない」
チラシを配る支援者の輪の中に、スーツ姿のさわやかな本田君の笑顔もあった。
本田君は2008年4月に日本基礎技術に大卒技術職として新規採用され、半年間の研修を受けていた。
ところが、7月末に突然退職勧奨を受けた。「睡眠不足により集中力が欠けている」「現場に出すとけがをする恐れがある」「試用期間なので会社はいつでも
採用を自由に取り消すことができる」などを理由に、会社は「これはもう決まったこと」と本田君に強く退職を迫った。解雇理由に納得することができなかった
本田君が、会社の勧める自己都合退職に応じなかったところ、会社は解雇通知書を送りつけてきたのだ。
今回の提訴は、社員としての地位保全の仮処分申請。
「試用期間中だからいつでも採用を取り消せる」などという会社の発言はまったくの暴言だ。最高裁は、試用期間中の解雇について「試用期間中の解雇は、解
約権を留保した趣旨から、採用時にはわからなかったが、試用期間中の勤務状態等から判断して、その者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断すること
が、試用期間を設定した趣旨・目的に照らし、客観的に相当である場合にのみ許される」とし、「試用期間中の者に、若干責められるべき事実があったとして
も、会社には、教育的見地から合理的範囲内で、その矯正・教育に尽くすべき義務がある」とも述べている。
「ものすごい温度差」
大学3回生後半から就職活動を始めた本田君は、専攻した土木工学へのこだわりを持っていた。合同説明会にも参加し、製造や電気、技術者派遣会社などから
内定も得ていた。しかし、やりたいのは土木・環境の分野だった。それで自分で調べて見つけ出したのが、日本基礎技術だった。
「地盤改良や地盤補強で独自の技術開発・工法を行っている企業であるのが、目に留まった」という本田君は、昨年11月に試験を受け、1月末には役員面接を経て、4月に採用された。
その本田君の夢と未来を会社は打ち砕いたのだ。
いま本田君の後輩の世代が内定取り消しにあっている。「就活はいろいろな選択がある中で、自分の希望や将来を苦労しながら時間をかけて選んだもの。それ
が急に取り消しと言われたら、なんで?となる。悲しい、切ない。就職する学生の気持ちと会社の思惑にはものすごい温度差がある。自分は見習いまできてい
た。会社を信じていたのに」。本田君は今の若者の悔しさを代弁する。
提訴に踏み切った背景にユニオン活動がある。
本田君は解雇後、一人でも入れる「なかまユニオン」に加入した。松下争議の吉岡力さんやエネゲートの吉岡誠一さん、正社員化を求める大西真波さんとも出会い、争議支援活動にも加わった。初めてだったが、街頭での署名活動も経験した。
「解雇された時は、何も言えなかった。あきらめ半分で、提訴など無理だと思っていた。だんだん変わってきた。会社の言い分は事実とは違う。このままではやめたくない。自分が選んだ道にあきらめがついていない。まだやれる。続けたい」
会社を見つめる本田君の笑顔に希望が見えた。
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