2009年07月10日発行 1091号

【キヤノン非正規労働者組合宇都宮支部書記長 阿久津真一さんに聞く 7月16日に東京地裁で第1回口頭弁論 期間の定 めのない雇用をめざす】

 キヤノン宇都宮光学機器事業所の偽装請負を告発し正規雇用を求めて闘ってきたキヤノン非正規労働者組合の組合員5人が原告となった裁判の第1回口頭弁論 が7月16日の16時、東京地裁で幕を開ける。阿久津真一宇都宮支部書記長に聞いた。(6月24日。まとめは編集部)

どうしても納得できない

◆提訴にいたった思いは。

 キヤノンに謝罪してもらいたいという気持ちです。

 3月から休業に入り、休業補償は手取りで月10万足らず。とても生活できません。経済的なことを考えて退職金を受け取って辞めた人もいます。残った組合 員は皆この職場が好きで一生懸命働いてきました。私たちにはその自負がある。キヤノンは利益が減ったと言いながら、配当金や役員報酬はまず確保する。労働 者を切って、なぜそこまでやる必要があるのか。

 「非正規雇用労働組合ネットワーク栃木」で一緒になったいすゞやホンダの人たちもそうです。正社員よりずっと低い賃金で仕事を頑張ってきた人たちが景気 が悪くなるとまっさきに首を切られる。

 秋葉原で無差別殺人事件がありました。彼は職場に行ったら服がなかったという。いつクビを切られるかわからず、まじめに働いても将来に希望がもてない。 そういう待遇を受け続けたら人生に絶望してもおかしくない。私たちは組合を作って会社と交渉してきましたが、そういうすべを知らなければ、あいつが首にな れば俺は助かる、という気持ちになってしまいます。

 私たちは自分たちの仕事が違法な偽装請負であることを知り、正社員化を求めてきました。何も悪いことをしていない私たちが退職を選んだらキヤノンの不法 行為がやり得になってしまう。どうしても納得がいきません。

◆組合員の生活状況は。

 アルバイトなどで生活を支えています。コンビニで働く組合員は、時給900円になる深夜に働いています。昼間だと700円にしかならないからです。これ は栃木県の最低賃金683円とほとんど変わりません。週に5日働いても月10万円ほど。それでも、組合は間違ったことはしていないと信じている。「会社の 仕打ちは社会的に許される行為なのかを確認したい」というのが組合員全員の声です。

 この前、いい条件の仕事話がありました。でも正社員という条件だと身分上はキヤノン社員の私たちには選べません。アルバイトではいい仕事はほとんどあり ません。手に技術をつけるために職業訓練校に通おうとしても、休業では入学することもできません。

 一人一人がこうして歯をくいしばって立ち上がったということを知ってほしい。

労働組合の原点がある

◆松下PDPの吉岡力さんの闘いとの連帯をいつも強調されています。

 偽装請負と闘う人にとって、派遣先の松下との間に黙示の労働契約を認めた大阪高裁判決は画期的です。ぜひ、確定させなくてはいけません。「公序良俗違 反」という論理は訴状にも盛り込みました。

 私たちはさらに高いハードルを目指したい。高裁判決は期間労働については問題にしていません。黙示の契約関係は期間の定めのない雇用だということを認め させてこそ、本当に勝ったのだといえます。10年近くも働いてきてどうして非正規の仕事と言えるでしょうか。常用の仕事であれば常用雇用にすべきです。

 これだけ非正規労働が社会に広がっている中で、上部団体の違いなど立場を越えて協力しあっていかなければ。幅広い人たちと一緒に進んでいきたいと思って います。

◆支援の訴えを。

 支える会の発足集会には国会議員も含めて多くの人が来てくれました。本当にありがたいことです。皆さんのおかげでここまで来ることができました。こんな 小さな、上部団体もない組合ですが、経団連会長企業のキヤノンを相手に職場の労働条件改善のために立ち上がりました。見かねて助けてくださったのでしょ う。ひょっとしたらこの闘いには労働組合の原点みたいなものがあるのかもしれません。

 支える会への入会をお願いします。最低の活動費として年100万円くらいの収入が当面の目標です。車に便乗して東京へ往復すると高速代とガソリン代で1 万円かかります。ネット栃木の共同行動も増えています。吉岡さんと一緒に全国オルグも行きたい。もっともっと私たちへの関心を持ってもらえるような取り組 みをしていかなくては。

 正社員の待遇が悪くなれば非正規労働者が正規になった時に困るし、非正規労働者が切り捨てられれば正社員も切り捨てられていく。立ち上がった非正規労働 者の広範な闘いで社会を変えていければと思います。

◆ありがとうございました。
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