2009年09月18日発行 1100号

【予想外の不当判決に怒り 大阪市「カラ残業」問題の手当返還訴訟 事実認定に誤り】

   大阪市が財政再建の名で「市政改革路線」を強行するきっかけとなった「カラ残業」問題。福祉切り捨てと一体で物言えぬ職場をつくるための処分は不当と提 訴して争われたが、地裁・高裁とも処分を容認した。その後、今度は大阪市が超過勤務手当の返還を求め職員を相手取り提訴した裁判で8月28日、大阪地裁内 藤裕之裁判長は、全額の返還を命じる不当判決を下した。被告とされた桑代俊博さんはただちに控訴した。

ただちに控訴

 当初、少額訴訟として始まったが与える影響の大きさから本訴となり、残業実態を無視した超過勤務手当の支給状態の違法性が追及された。裁判所は和解提案 を示したが、大阪市側が「和解に応じることで住民監査請求が出されれば、苦しくなる」と拒否したためこの日の判決となった。

 職場からは残業実態を示す数々の陳述書や退庁簿(担当係の最終退出者の氏名と時間を記録したもの)などの証拠が提出され、カラ残業ではなく、未払い残業であることを明らかにしてきた。

 法廷内に「金1万8945円の支払え」と被告・桑代さん敗訴の判決文が述べられると、「おかしいやないか」との声が響いた。

 すぐに報告集会が開かれ、不当判決への新たな闘いが開始された。桑代さんは「予想外の判決だ。職場のいろんな人たちの協力で、残業実態を示す証拠を集 め、立証できたと思っていた。先の裁判でも超過勤務手当の支給額を削るため大阪市の不正な慣行≠ニ常態化してしたことを認めていた。今回、大阪地裁が 退庁簿に記載があっても、残業していたと認められない≠ニ否定したことに驚いた」と怒る。桜井健雄弁護士は「これまで私が関わった判決の中で一番最低。 事実認定に大きな誤りがある。被告の証人陳述の場面で裁判長が払う気持ちはないのですね≠ニいう質問をしたのは、支払って当然とする考えからだった」と 不当判決であることを強調した。

モノ言えぬ職場許さない

 巨額な財政赤字に対し、市民負担強化と福祉切り捨て、非正規職員拡大で対応している大阪市。全国一の生活保護世帯数により、ケースワーカーが約600人 も不足している。人員不足を臨時職員の配置で乗りきろうとしている。報告集会に駆けつけた松下PDPの不当解雇と闘う吉岡力さんは「8月から採用された臨 時職員の人件費が7840万円。採用人数55名で割ると、一人当たり143万円。200万円にも達していない」と非正規職を拡大し低賃金労働に縛りつける 大阪市の不当さを指摘した。

 桑代さんも「大阪市は、財政赤字の原因となった港湾部開発などの巨大開発への反省がないまま、巨大プロジェクト計画を再開しようとしている。そのために 黙って従う職員づくりが進行している」と訴えた。福祉・医療・教育問題を放置したまま、WTC(大阪ワールドトレードセンタービルディング)への府庁舎移 転と絡めた港湾部開発、梅田駅ヤード跡地開発計画に続いて、地下鉄なにわ筋新線工事、高速道路建設計画が相次いで息を吹き返そうとしている。

 桑代さんは「大阪市に逆らってはダメ。声を上げてもムダ。素直に従うしかない≠ニの意識が職場に広がることを止めたい。控訴して高裁で誤った判断をくつがえす」と勝利解決まで闘うことを表明した。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS