2009年10月03日発行
1109号
【そうだったのか、日本の教育費 世界最悪級の家計負担 犯人は政府・グローバル資本 公教育切り捨ての帰結】
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政府が教育にカネをかけないため、教育でも経済力による格差が生じている現代日本。「教育の機会均等」はもはや幻想でしかない。その実態をデータから読み解いていきたい。題して「そうだったのか、日本の教育費」。
まさに教育貧困国
「お金の面では、日本の教育は先進国の中で最低レベル。教育費の個人負担が大きい」。近年、こんな指摘をよく目にするようになりました。
根拠となるデータがあります。経済協力開発機構(OECD / いわゆる先進資本主義国30か国が加盟する国際シンクタンク)が毎年行っている国際調査「図表でみる教育」のことです。
先日、公表された09年版の調査結果をみてみましょう。まず、注目したいのは、国と自治体をあわせた教育予算が国内総生産(GDP)の何割を占めているかです。パーセンテージが高いほど、その国は教育にお金をかけていることになります。
OECD平均4・9%に対し、日本は3・3%。データがある28か国中、下から2番目でした。この年(調査対象は06年)だけが悪かったのではありません。00年の調査以降、日本は毎年最下位争いをしています。
一方、教育支出に占める家計負担の割合は21・8%と他国を大きく上回っています。特に就学前(38・3%)と大学などの高等教育段階(51・4%)で
突出しています。高等教育において日本は「授業料が高く、奨学金などの学生支援態勢が比較的整備されていない国々」に分類されてしまいました。
また、1クラスあたりの子どもの人数(07年)をみると、日本は小学校が28・2人(各国平均は21・4人)、中学校が33・2人(同・23・9人)
と、国際標準よりかなり多い。OECDの分析官は「日本の教育は、1クラスあたりの子どもの数が多いため、教育予算を抑えることができる」と指摘していま
す。
経済大国のくせに教育への投資を惜しむケチな国−−それが国際調査が映し出した日本の姿なのです。
まだ削減を主張
どうしてこんなことになるのか。ろくなことは何一つしない文部科学省ですが、文教予算の増額は要求します。OECD平均並みに引き上げることを政府目標に盛り込もうとしてはいたのです。
ところが、文科省の計画は財務省の猛反発であっさり潰されてしまいます。財務省とその背後にいるグローバル資本にとって、財政緊縮路線に反する教育予算の増額などもってのほかだったのです。
彼らの言い分を財政制度等審議会(予算編成をはじめ、国の財政全般のあり方を検討する財務相の諮問機関)の議論からみていきましょう。まずは、財務省の主張です。
・教育予算が少ないというが、日本は支出対象となる子どもの数が減っており、子ども1人あたりでみれば主要先進国と遜色ない。
・日本は「小さな政府」(政府全体の歳出規模が小さい)なので、教育への公的支出が少ないのは当たり前。
・そもそも、投入量(教育予算)と成果(学力)に密接な関係はない。
・小規模校の再編(学校統廃合)を促す方が先だ。
OECDの調査によると、子どもの数が減っても教育予算を増やしている国が結構あるんですけどね。「小さな政府」うんぬんは完全な開き直りです。とにかく、財務省が教育予算の増額どころか、まだ減らし足りないと考えていることは明らかです。
次に、財界関係者が多い財制審委員の発言です。「多様で付加価値の高いサービスは、国ではなく民間が提供するのが普通。すべて公的部門で対応しようというのは間違いではないか」「市場に任せることが重要であって、国がとやかく言う話ではない」「もっと競争させろ」等々。
さすがはグローバル資本の代理人、「教育は買うもの。市場原理に任せて何が悪い」という発想です。彼らにとって公教育はもはや切り捨ての対象でしかありません。こんな連中が国の教育政策を実質的に牛耳っているのです。
ちなみに、全国学力テストや学校選択制の本当の狙いは、教育費の削減を進めることにあります。テスト競争の「敗者」となった学校は、選択制の下で生徒を集めることができず、自然に淘汰(統廃合)されていく、というわけです。
教育の機会均等を
日本はなぜ「教育貧困国」なのか。答えはもう明らかですね。政府・グローバル資本が公教育切り捨て政策を進めてきたからです。政策的につくられたものは、当然世論の力で変えられます。
先の衆院選挙では、民主党も自民党も「子育て・教育支援」を目玉政策に掲げました。グローバル資本の代弁者である両党といえども、世論は無視できないと
いうことです。また、奨学金の問題では返済猶予制度の改善などの前進がありました。奨学金の返済に苦しむ当事者が声を上げ、社会的に運動を広げたことが成
果につながりました。
教育は次世代の担い手を育む営みですから、すべての市民が当事者です。憲法が保障する「教育の機会均等」を真に実現すべく、私たち当事者が政府に要求を突きつけていきましょう。 (M)
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