2010年04月16日発行
1129号
【ブラックリスト化に怒り 奨学金問題で院内集会 教育の機会均等に反する】
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3月31日、「教育の機会均等を作る『奨学金』を考える連絡会」の主催で院内集会が開催された。多くの反対の声を押し切って4月から返還延滞者の個人信用情報機関への通報、いわゆる“ブラックリスト化”が始められたことに次々と怒りの声があがった。
サラ金まがいの回収
集会には共産党・社民党の4人の議員・議員秘書を含め29人が参加した。
焦点となったのは、ブラックリスト化。自らも奨学金返済を抱える大学院生の高瀬久直さんは「奨学金申請時の契約にブラックリスト化の条項はなかった。し
かし今は、同意しなければ支給を打ち切ると通告され同意書提出を迫られた。大学院を出ても就職口がない厳しい状況の中で、社会に出たばかりの若者たちを金
融サービス・利用から排除するブラックリスト化は問題だ」と制度の凍結を訴えた。
ブラックリスト化を含む奨学金返還回収強化策は、一方で有利子奨学金の貸与者を年々拡大しながら、「制度の健全性確保」を名目として進められてきた。文
部科学省は、07年度時点で2200億円を超える延滞債権を2年間で半減するとの目標を掲げ、回収業務を民間委託し、督促を強化。延滞9か月を超える場合
原則として法的措置を講じるなど、サラ金まがいの取り立てに奔走してきた。3月に可決された10年度予算でも、回収強化策のさらなる徹底に向けて約13億
円が計上されている。本来、憲法第26条に規定された教育の機会均等を保障する政府の責任に立脚した制度であるはずの奨学金制度。その変質=貸金業化は深
刻な事態に及んでいる。
集会参加者の一人、Aさんは大学在学中の3年間に約160万円の奨学金を受けた。卒業後数年は返還したが精神疾患を発症、定職に就くことができず返還の
めどが立たない。返還猶予申請を毎年行っている。「学生支援機構は、免除してほしいという私の申請を受け付けない上、医師の診断書を偽物だと決めつけた。
死ぬまで返還猶予の申請を続けねばならないのか」と、減免制度の不備に怒りをあらわにした。
抜本的な改革を
約70万円の奨学金返還を抱えるBさんはフリーターで、月収は17万円程度。さらに精神疾患を抱え返済が滞るうちに、簡易裁判所から支払督促が届いた。
学生支援機構に相談したが、法的措置に入ってしまった以上返還猶予の申請はできないと突っぱねられ、困り果てて首都圏なかまユニオンに相談に訪れた。低賃
金・不安定雇用が拡大する実情を無視した回収強化策は、貧困にあえぎ「返したくても返せない」若者をさらに追い詰めている。
首都圏なかまユニオンの伴幸生さんは、原資の約7割を財務省の財政融資資金に依存する制度設計自体の問題性を指摘する。「財政融資を原資とする以上、財
務省の監査が入り、未回収債権に対する対応が問われ、有利子奨学金を拡大し利潤を得ることが優先される。これは奨学金制度の本旨に反する」。今年度の予算
案については、「返還猶予者に対する減額返還制度の導入が盛り込まれたことは一定の前進。しかし、最も困窮している延滞者への支援策となっていない」と抜
本的な制度改革を訴える。
連絡会では今後、請願署名活動やホットラインの開設、文科省へのヒアリング、国会での質問主意書提出などを予定している。
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