2010年08月13日発行 1145号

【戦争国家路線を鮮明にする民主党政権 ジブチに自衛隊基地を建設 「なぐり込み」部隊創設も検討】

 民主党・菅内閣は7月16日の閣議で、アフリカ東部ソマリア沖・アデン湾で行なっている自 衛隊の海賊対策活動を1年間延長することを決めた。翌17日、ソマリアの隣国ジブチで自衛隊基地建設の起工式が行なわれた。自衛隊にとっては初の海外基地 となる。また陸上自衛隊の一部を海兵隊化する検討を始めるなど、民主党の戦争国家路線がますます鮮明になってきている。

アフリカ進出の足がかり

 自衛隊の海賊対策は昨年3月に海上警備行動として開始され、同6月に海賊対処法が成立した後は海賊対処行動として行なわれてきた。現在、約150名の陸 上、海上自衛隊員がジブチに常駐し、「護衛艦」2隻とP3C哨戒機2機がソマリア沖・アデン湾で活動している。

 現在、隊員宿舎はジブチ空港に隣接する米軍宿舎を借り、P3C哨戒機2機の駐機場や牽引車・トラックなどを収める格納庫は空港管理会社から借りている。 また滑走路はジブチ空港の滑走路を利用している。

 今回建設されるのは、事務所および駐機場、隊員宿舎、格納庫などだ。防衛省は「軍事基地を新設するといった性格のものではありません」(海幕広報室)と して「活動拠点」だと強弁しているが、そう言い換えてみたところで自衛隊が初めて海外に建設する軍事基地であることに変わりはない。AFP通信の取材に答 えた海上幕僚監部所属(当時)の北川2等海佐は、「国外で唯一、アフリカでは初の日本の基地(base)となる見通し」と明確に語っている(4/23配 信)。

 昨年6月の海賊対処法の採決に際して、当時野党だった民主党は「自衛隊派遣の国会事前承認が必要」と主張して反対した。しかし民主党は政権に就いてから 「国会事前承認」を盛り込む法改正を提起することもなく、ソマリア沖での海賊対処活動の単純延長を閣議決定した。また、42億円の建設費を投じるジブチの 基地建設もそのまま認めた。

 ソマリア沖では現在、約30か国が軍艦を派遣して「海賊掃討作戦」に従事している。紅海は地中海とインド洋とを結ぶ輸送ルートであり、グローバル資本は アフリカのレアメタル・石油などの天然資源確保のために、これらの地域の軍事的支配を求めている。ジブチは今や、この輸送ルートを確保する上での「戦略的 要衝」となっている。すでにジブチ独立前から基地を置いているフランスに続き、米軍が基地を確保している。日本の基地建設は、アフリカで外交攻勢をかける 中国に対抗し、アフリカの天然資源確保に向けた軍事的足がかりを築く狙いがある。

 さらに菅内閣は、ソマリア沖に補給艦を新たに派遣し、外国船に洋上給油を行なうことについてまで検討し始めた。だが、海上自衛隊の補給艦による外国船へ の給油は海賊対処の活動内容には含まれておらず、実施するためには法改正が必要となる。

グローバル資本の意に沿う

 菅内閣は、憲法9条の制約から自民党政権が掲げていた「専守防衛」の建前すら投げ捨て、戦争国家路線をいっそう推進しようとしている。

 7月末、首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=佐藤茂雄・京阪電鉄最高経営責任者)の報告書案が明らかになった。 8月上旬には菅首相に正式に提出され、年末に策定される予定の「防衛計画の大綱」のたたき台となる。

 報告書案は、○「基盤的防衛力」の整備という概念を時代遅れと否定、非核3原則の見直し(「持ち込ませず」の撤廃)○国連安保理決議の有無にこだわらな い国際的軍事行動への参加○南方離島への部隊配備と潜水艦の増強○武器輸出3原則の見直し○集団的自衛権の行使についての憲法解釈の変更○PKO参加5原 則の見直し(要件緩和)などを提言している。これは、グローバル資本の海外権益を守り、台頭する中国を封じ込めるために、従来のさまざまな制約を取り払 い、自衛隊の海外派兵拡大と海外で武力行使できる体制整備を求めたものだ。

 さらに、菅内閣・防衛省内では陸自の一部海兵隊化も検討されている。長島防衛政務官は7月26日に行なわれた講演会で、「(日本の)南西方面は手薄だ。 陸自は一部海兵隊(米軍)の機能を担うように変わらなければならない」(7/27赤旗)と述べた。

 海兵隊とは本隊の先陣を切る「殴り込み」部隊であり、海兵隊の創設は自衛隊のいっそうの本格的侵略部隊化を意味している。「防衛」など、もはやただの口 実にすぎない。

 民主党政権による戦争国家路線強化の事実を暴き、"基地も軍隊もいらない"の声を広げていかなくてはならない。
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