2011年04月08日発行 1177号

【野菜・牛乳・飲料水も放射能汚染 高まる内部被曝の危険】

 福島第1原発は、現在も日々放射性物質を放出し続けており、ホウレンソウなどの野菜・原 乳・飲料水、そして海水からも基準値を数倍から数千倍も上回る放射性物質が検出されている。政府やテレビ解説者は「ただちに健康に影響を及ぼすものではあ りません」と決まり文句を繰り返すのみだ。だが、「住民にとって問題なのは、後年になってあらわれるおそれがある内部被曝」(野村大成・大阪大名誉教授) だ。

測定結果に疑問あり

 もともと食品衛生法には、国内の原発による放射能汚染はないとの「神話」の下で、輸入品をのぞいて放射性物質に関する基準がなかった。そこで厚生労働省 は事故後の3月17日、汚染を想定し、あわてて放射性のヨウ素131やセシウム137などの暫定規制値を設定した。ヨウ素131の場合でいえば、一定量の 野菜や牛乳などをとり続けた場合、甲状腺での放射線量が50_シーベルトを超えないように算出したもので、飲料水・牛乳・乳製品1g(1`)あたり300 ベクレル(放射能の強さを示す単位)、野菜類1`あたり2千ベクレルとされる。飲料水に関する世界保健機構(WHO)の摂取基準では、ヨウ素131は10 ベクレル未満とされており、政府の暫定値は実にその30倍という甘い基準でしかない。

 また測定の仕方にも疑問が投げかけられている。厚生労働省によると、放射能測定は「付着する土やほこりに由来する検出を防ぐために、流水で洗浄して検査 するように」しているという(週刊朝日4月1日号)。それなら、野菜に付着していた放射性物質も洗い流されてしまい、実際の放射能は公表されている値より も強い可能性があるのだ。

 同じ量の放射線でも、外から浴びる(外部被曝)のと体内から浴びる(内部被曝)のでは影響の大きさがまったく違う。

内部被曝のこわさ

 それは放射線の強さは距離の2乗に反比例するという原理があるからだ。例えば、皮膚の外皮に付着した放射性物質と皮膚細胞との距離を1_とし、体内に入 り細胞に取り込まれた放射性物質と細胞との距離を1ミクロン(1000分の1_)と仮定すると、放射線は後者の方が100万倍(1000×1000)も強 くなる。外部被曝用に設定された基準値を内部被曝用にそのままあてはめてもあまり意味がない。

 しかも外部被曝の場合は払うなり洗い流すなりして放射性物質を取り除けるが、内部被曝の場合は放射性物質が排泄されたり半減を繰り返してなくなるまで放 射線を浴び続けることになる。細胞は傷つき、その傷は新しい細胞へと受け継がれていく。それが引き金となって何年後、何十年後にがんや白血病を発症したり する。チェルノブイリ原発事故の際には、4〜5年後から小児甲状腺ガンが多発し始めた。

妊婦・子どもは避難を

 被曝による被害を受けやすいのは、胎児・10代の子ども・小児であるといわれる(本紙1176号7面参照)。福島県はもちろん北関東・東京に住む妊婦や 子どもも、できるだけ遠くへ移動する必要がある。すぐに離れられない場合、放射性物質が検出されている地域では、体内被曝を避けるために外出時はマスクな どをした方がいい。

 放射能で汚染された野菜は出荷停止されることになっているが、正確な情報開示と厳しいチェックが必要であり、もちろん農家には東電・政府の責任で補償さ せなければならない。さらに、問題は汚染された水道水だ。飲料用に使うことは避け、政府・自治体に十分な量の安全な飲料水を配布させる必要がある。
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