2011年07月29日発行 1192号
【1192号主張 朝日新聞の「原発ゼロ提言」 20年後でなく今停止だ】
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朝日の路線転換
7月13日、朝日新聞は「提言 原発ゼロ社会」と題する社説特集を組んだ。1面で論説主幹が「いまこそ政策の
大転換を」と訴え、2面分を使って「脱原発へ」「核燃料サイクルは撤退」「自然エネルギー政策」「新たな電力体
制」を打ち出した。浜岡原発3、4、5号機は廃炉にし、新たな原子炉は建設せず、原発は「20年後にゼロ」を目
標とするという。
現在の日本で、朝日新聞は、グローバル資本とその代弁政治家・官僚たちのオピニオン・ペーパーの役割を持つ。
朝日が原発推進から脱原発へ大転換した意味は大きい。収束のメドの立たない福島事故と放射能汚染、高まる一方の
反原発世論と運動を前に、”原発から撤退”への流れはもはやカネと権力で止めることはできない。そのことをグ
ローバル資本、支配層も認識せざるを得ない事態なのだ。
同じ13日、菅首相は「脱原発依存」を宣言し、原発増設のエネルギー基本計画の白紙撤回を表明。経済同友会の
長谷川代表幹事は「縮原発」を提言し(7/5)、自動車工業会の志賀会長は全原発停止も想定して対応を検討する
考えを明らかにした(7/12)。これらも朝日と同一線上にある。
運動が「国策」変える
「国策」として進められてきた政策を現実に変える―日本の民衆運動史上、かつてない局面が今訪れている。3・
11フクシマ以降の”原発ノー、命を守れ”の新たな運動と世論の力は、グローバル資本と政府の原発推進政策を転
換させようとしている。
事故発生以来、事態の真相と危険性をひたすら覆い隠し、「ただちに健康に影響ない」とウソを繰り返す。東電や
政府にまかせていたら、命が奪われ日本は本当に破滅してしまう。そのことにもっとも敏感に反応したのが、未来を
生きる若者、子どもの命を守ろうとする母親だ。
4月10日東京・高円寺の若者中心の1万5千人デモ、全国140か所7万人の6・11脱原発アクションなど、
数知れないデモや行動。「何かをしなくてはいけないと思った」「どこかで声を上げないと変わらない」。どの行動
にも初参加の若者が多くいた。
5月23日、子どもへの「20ミリシーベルト基準」撤回を求め文科省に押しかけた福島の親たちは事実上の断念
を実現。各地で母親たちが校庭や通学路の放射能測定、汚染土の除去、給食食材の点検を求め行動し始めた。「子ど
もを放射能から守ろう」という必死の思いは、自治体交渉を実現し、全国的なネットワーク結成につながった。
若者と母親たちの新たな運動が世論を変え「国策」を揺るがしている。放射能汚染と原発がある限り、この怒りが
収まることはない。
20年後は遅すぎる
九電の「やらせメール」暴露やストレステスト(耐性検査)実施で、停止中原発の今夏再稼動は不可能になった。
だが、朝日が目標とする「20年後(2031年)原発ゼロ」など遅すぎる。地震列島日本は、明らかに活動期に
入った。福井や佐賀を明日のフクシマにしてはならない。「電力不足」はウソだ。運転中の原発を止めることこそ急
がなければならない。すべての原発の即時停止、全廃へ今踏み出そう。
(7月18日)
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