2011年09月02日発行 1196号

【福島の子どもたちが政府に訴えた 「原発は動かすべきでなかった」「みんなで避難したい」】

 「私たちを守ってください」。8月17日、福島から小中学生4人が40通の子どもたちの手 紙を携えて上京。総理府原子力被災者生活支援チーム、文科省官僚との交渉に臨んだ。会場からあふれる200人以上の大人と子どもが見守った。

 主催した子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの西片嘉奈子さんは「娘から『放射能っていつなくなるの』と聞かれたのがきっかけで企画し、子ども の手紙を呼びかけた。小学生高学年からは『ふつうの赤ちゃんを産めるのか』という声もあった。子どもたちには子どもたちのコミュニティがあり、別れの辛さ がある。その思いを受け止めることが対策の第一歩。それを支えるのが大人たちの役目」と趣旨を説明した。

「原発が大嫌いです」

 政府側出席者10人に手紙を手渡した子どもたちは堂々とそれぞれの意見を表明した。

 「早く除染をしてほしい。友だちや家を奪われた人たちに責任をとって」(小林茉莉子さん・小5)

 「法律で決まっている数値を何十倍にも引き上げて安全なんてやり方は、私たち中学生にも通用しない。みんなで一緒に避難できるよう真剣に考え、福島県を 徹底的にきれいにして」(橋本伽耶さん・中2)

 「仲がよかった友だちが避難してがっかりした。外でも遊べない。こんな生活が続くなら、原発はなくなったほうがいい」(宗像真木椰〈なおや〉くん・小 3)

 「今年は去年に比べて暑いのに、プールにも入れない。宿泊学習が2泊3日から1泊2日になってしまった。原発は動かすべきではなかった」(宗像留椰 〈りゅうや〉くん・小5)

 西片さんは1通の手紙を代読した。「友だちはまだ福島にいます。事情があって避難することができません。心配です。こんなことにした原発が大嫌いです。 早く原発をなくして、福島をきれいにして」

旧態依然の政府答弁

 これに対する政府側の答えは旧態依然そのもの。「しっかり担当部署に伝える」「どこへ避難しても安心して学校に通えるようにしたい」と官僚言葉を連発し た。「子どもたちにわかるように話して」と会場から声が上がる。

 要望について「一番頑張ってというのは除染のことと思う。元の生活に戻れるように努力する」(被災者支援チーム)と除染のみに限定した答弁に子どもたち は疑問をぶつけた。

 「街がきれいになっても安心できないからみんなが手紙を書いた。もう一度話してください」「除染だってなぜ早くやらなかったのですか」。これには、しど ろもどろで「受け止めなければと思うが、まず学校を…」「予算や関係機関の調整をして…」。

 たまりかねた橋本さんが「みんなで避難したい、というお願いへの答えがまだありません」と催促するとマイクを押し付け合う政府側。空白の時間を経てよう やく「必要に応じて避難すべき区域を設定する。学校単位で、ということについては文科省が説明したとおり」と強引に打ち切った。しかし、文科省からは疎開 にふれた発言はまったく出ていない…。

「なぜ質問を聞かないの」

 交渉を終えた子どもたちが感想を語る。橋本さんは「疎開が決まっていないならそう言ってくれたらいいのに。ずっと黙られて、質問の内容も変えられてがっ かり。もっと答えられる人に来てほしかった。私たちがどんな目にあっているのか、全国の人にもしっかりと考えてほしい」。

 宗像(留)くんは「なんで大人なのにちゃんと子どもの質問を聞いていないのか。次の機会があったら、もっと直球的に質問してわかりやすい答えが返るよう にしたい」。

 この日決まった泊原発の再稼働について感想を求められた小林さんは「福島の事故が起きているのに。北海道でも事故が起きたら、北海道の人たちも被曝し、 日本中が大変になる。悲しい」。宗像(真)くんの答えは会場を沸かせた。「子どもの言葉が伝わらないのは、子どもの時にちゃんと勉強していなかったの か…。みんなと一緒なら避難したい」

 俳優の山本太郎さんもかけつけた。「政治家では変わらない。国民一人ひとりが意識を変えて本気で闘うしかない。『がんばってるね』と子どもに言われるよ うにがんばりましょう」

 子ども福島ネットの中手聖一さんは「広大な福島県が汚染されてしまい、それに代わる土地をまるごと確保するのは不可能。福島に根を持ちながら全国各地に 集団で避難する『サテライト疎開』を進めていく」と支援を呼びかけた。
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