2011年09月23日発行 1199号

【福島市の土壌汚染 149万5千ベクレル/u 直ちに強制避難が必要なレベル】

年間20_撤回


 文部科学省は8月26日、福島原発事故直後に定めた学校での屋外活動を制限する放射線量の目安の年間20ミリシーベルトを廃止し、年間1ミリシーベルト を目指すとした内容を福島県に通知した。

 また、年間100ミリシーベルト被曝しても健康に影響がないなどとデマを振りまいてきた山下俊一・福島県立医科大副学長が、県放射線健康リスク管理アド バイザーにとどまりながらも放射線防護担当から外れることが決まった。

 これらは、県内外の市民が闘いで勝ち取った成果だ。

強制避難区域

 しかし、福島県全体の放射能汚染はきわめて深刻な状況にある。とりわけ県庁所在地・福島市(人口29万人)は、政府の計画的避難区域とはされていない が、その汚染は全市民を強制避難させなければならない水準にある。

 文部科学省が公表している福島県内の土壌サンプリング測定結果を見てみよう。

 6月1日、福島市杉妻町(福島県庁のあるところ)の土壌から、放射性セシウム134、137の合計で1キログラムあたり2万3千ベクレルが検出された。 これを1平方メートルあたりに換算すると149万5千ベクレルに上る。チェルノブイリ原発事故の際の避難基準で見ると、強制避難ゾーンと呼ばれる第1区域 (1平方メートルあたり148万ベクレル以上)に該当する。

 この日は5件の土壌サンプリング調査が行われているが、第1区域の基準を下回ったのは1件のみ。6月22日時点でも5件のサンプリングのうち第1区域の 基準を下回ったのは2件だけだ。

 より原発に近い南相馬市と比べてもはるかに高い汚染であり、事故直後からホットスポットとされてきた浪江町津島に匹敵する。汚染が特にひどい浪江町赤宇 木と比べれば土壌中の放射性物質の濃度は1桁低いが、浪江町の全域がすでに避難区域になっていることを考えると、これと同等の汚染水準にある福島市は直ち に全域で避難が必要だ。

猛毒テルル検出

 さらに深刻なのは、6月1日の段階で毒性の強いテルル129mという放射性物質が1キログラムあたり1500〜4600ベクレルも検出されたことだ。1 平方メートルあたり9万7千〜29万9千ベクレルに達する。仮に最大値の29万9千ベクレルとすると、これだけでチェルノブイリ事故時、希望者に移住の権 利が与えられた第3区域(1平方メートルあたり18万5千〜55万ベクレル)に相当する。

 このテルル129mは半減期が約33日と短く短時間に多くの放射線を出すため、人体への危険性は大きい。さらに、テルル129mは崩壊後、半減期が 1600万年のヨウ素129に変化する。他のヨウ素系核種と同じように内部被曝すると甲状腺に集まる。甲状腺ガンを招きかねないきわめて危険な放射性物質 だ。

チェルノブイリ原発事故の避難基準
避難区分

(キュリー/ku)
(ベクレル/u)
第1区域
即時強制避難ゾーン
40以上
1480000以上
第2区域
強制移住ゾーン
15〜40
555000〜1480000
第3区域
補償付き任意移住ゾーン
5〜15
185000〜555000
第4区域
放射線管理ゾーン
1〜5
37000〜185000

避難認めぬ行政

 警戒区域(原発から半径20キロメートル以内)を別にすれば、飯舘村、浪江町などの計画的避難区域は原発から北西方向に集中している。福島市も原発の北 西に位置する。福島県民の間では、早くから県庁所在地が危ないと言われてきた。空間線量で見ても、この土壌調査が行われていた6月の時点では1時間あたり 1・5マイクロシーベルト近くあった。9月に入った現在でも1マイクロシーベルト前後のままだ。

 このような場所で通常通り学校の授業を続けるなど正気の沙汰ではないが、国も県もかたくなに子どもたちの避難・疎開を拒み続けている。特定避難勧奨地点 指定に向けて放射線量測定が行われた福島市大波地区でも、1時間あたり2・9マイクロシーベルト(1年間に25ミリシーベルト)を計測する地点があったに もかかわらず、指定を行わない方針が示された。県は住民説明会で「避難は経済を縮小させる」と公言した。ことここに至っても、人の命よりも東電と政府の巨 額の賠償負担を回避することが優先されているのだ。

 大波小に2人の娘を通わせる女性は「娘の同級生は半分になっている。指定されないなら自主避難しかない」と不満を示した。福島県では、すでに5万人以上 の県民が県外へ避難した。今も県民の34%(中学生以下の子どもがいる世帯は51%)が県外移住を希望している(9/10朝日)。

 県外避難は福島県民の要求だ。この要求を支援し、避難の権利を確立する闘いを強化しよう。
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