2011年11月11日発行 1206号

【ふくしま集団疎開裁判の会代表・井上利男さんの話 「命を守る」この一点で立ち上がろう】

 6月、郡山市の小中学生14人が年1ミリシーベルト以下の環境で教育を実施するよう求めて 福島地裁郡山支部に仮処分を申し立てた。これを支援する「ふくしま集団疎開裁判の会」の井上利男代表は10月22日、団結まつりの前夜祭で以下の通り報告 した(要旨)。



 きょう亀戸駅に降り立ったとき、思わず深呼吸した。『智恵子抄』の福島の「ほんとの空」は信じられなくなった。

 私が住む県営住宅の放射線量(10月)は地上50センチの高さで毎時2・004マイクロシーベルト。放射線管理区域の3倍の数値だ。この広場に毎朝、子 どもたちが集合し、マスクもせずに集団登校している。

 集団疎開裁判で原告側は「健康を保障できない場所での教育は憲法・教育基本法・子どもの権利条約に違反する」と主張。これに対し被告は「除染に努力し、 空中線量は低下傾向」「生徒には転校の自由があり、郡山市は生徒の転校を邪魔していない」などと反論している。

無法者を許すな

 被告側主任弁護士は、市の商工会議所や医療機関などでつくる「放射能の危機を考える会」なる団体の理事長を務める。この会は(1)除染と高校生までの医 療費無料化(2)放射線利用による最先端医療の推進(3)福島県内に無税特区の設置―を求める署名活動を実施中。これは福島県民を外に出すなという運動 だ。医療費を無料にする前に子どもたちが健康でいられる条件を確保すべきだ。除染にも住民を何の防護もなしに駆り出している。

 「ミスター100ミリシーベルト」の山下俊一が副学長に収まった福島県立医大は、1千億円かけて放射線医療中核施設の一大事業を始める。生まれたての赤 ん坊から年寄りまで福島県人を放射線づけにした利権のかたまりだ。除染にも巨額の国家予算が付き、ベンチャー企業が参入する。除染した表土の中間処理施設 の建設にも日本中の大企業が群がってくる。県民を被曝地に人質にとった利権構造が福島県に着々と築かれつつある。被告側弁護士の署名活動もその一環だ。

 私は佐藤雄平知事と3人のアドバイザーだけでも告訴したい。彼らはにこにこしながらジェノサイド(集団殺りく)をやっている。人道に対する罪であり、立 派に国際法で裁くことができる。

 年間1ミリシーベルトの基準はほごにされてしまった。日本はすでに法治国家ではない。無法者たちによる無血クーデターだ。命を守る―この一点で一人ひと りの市民が立ち上がらなくてはならない。
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