2011年11月11日発行 1206号

【そうだったのか大阪都構想/大阪市・堺市を解体、財源を吸収/企業に奉仕する都市づくり】

 11月27日に行われる大阪ダブル選挙。府知事を辞職して大阪市長選挙にのぞむ橋下徹が掲 げる「大阪都構想」が最大の争点と言われている。だが、具体的な中身は不透明なまま、「大阪市役所解体」などのキャッチコピーだけが上滑りしているのが現 実である。大阪都構想とは何か。今回も「そうだったのか」形式で明らかにしたい。

2つの市が消える

 「大阪『都』ってどういうこと?」「意味わかんない」。大阪以外にお住まいの方は一連の騒動をこのように見ているのではないでしょうか。実際、橋下の言 動はテレビの見世物としてはおもしろいかもしれませんが、肝心の政策は少しも伝わってきません。

 当の大阪府民も「都構想はよくわからん」と思っています。直近の世論調査(11/1読売)をみても、ダブル選挙の争点に都構想を挙げる人は半分もいませ んでした(選択肢中最下位の47%)。判断のしようがないんです。
 それでも橋下は説明責任をはたす気はありません。「私の役割は街頭で無党派の支持をつかむことです。有権者の感情に訴えるときは政策は言いません」と公 言しているほどですから。得意の公務員叩きで票をかすめとることしか考えていないのでしょう。

 マスメディアもひどいもんです。橋下の主張を無批判にたれ流し、ウソを広める役割をはたしています。たとえば、「そうだったのか」の本家・池上彰さん も、大阪都構想に関してはこんな調子です(11/3週刊文春)。

 「構想では、大阪市と大阪府を再編して大阪都にし、大阪市だった場所は大阪都の八ないし九程度の区に再編します」「橋下知事は、大阪市と大阪府の二重行 政の無駄があり、両者を再編することで、効率的な行政ができるようになると主張します」−−まるで解説になっていません。ただの受け売りです。

 大阪都構想の核心は大阪市と堺市の廃止にあります。政令指定都市でもある2つの基礎自治体を解体し、その権限と財源を広域自治体の「都」が取り上げると いうプランなのです。たんなる「府市再編」ではありません。

 大体、「二重行政の無駄」をなくすために大阪都を無理やり実現させるなんて筋が通りません。それは府と市が調整すれば十分解決できる問題ではないです か。こじつけにもほどがあります。

福祉切り捨ては確実

 「都が権限と財源を取り上げるってどういうこと?」。いい質問ですね。東京都をモデルに説明しましょう。

 一般の市が持つ消防・救急、上下水道、都市計画などの権限が、東京では特別区(いわゆる23区)ではなく都にあります。また、普通なら市町村税になる税 金の一部が都税として都に入ります。こうして都が巨大な財源を確保する仕組みになっているのです。

 特別区からみると、本来の税収の55%は都区財政調整交付金という形で都から再配分されますが、残り45%は持っていかれたままです。こんな仕組みでも 23区の財政が成り立つのは、日本の富が集中する首都東京だからです。パイの大きさ(税収)が他府県とは全然違うんですね。

 大阪でこんなことをやったら大変です。現状でも苦しい市の財政事情が特別区になって一段と悪化することは目に見えています。特別区の役割とされる「身近 な住民サービス」の縮小は必至です。

 橋下は「皆さんの区が特別区になれば、そこでは皆さんが予算や福祉を決められるんです」と吹聴していますが、財源がなければどうしようもありません。せ いぜい福祉切り捨ての「自由」が与えられるぐらいです。

 一方、特別区から税収を吸い上げ財政力を増した大阪都は、強大な権限を一手に握る都知事の下、橋下の言う「成長戦略」すなわち巨大企業(グローバル資 本)の利益にかなう大規模開発にまい進するでしょう。橋下は企業減税もやると言っています。だから職員大リストラが必要になるんです(維新の会は3割以上 の削減を主張しています)。

 要するに、大阪都構想の目的は「企業に儲けてもらう」(維新の会公式サイト)ことにあるんですね。そのための自治体改造計画なんです。企業を儲けさせる ことが目的ですから、大阪都がタダで取得する市の優良資産は売却=民営化の対象になります。その筆頭候補が黒字経営の大阪市営地下鉄であることは言うまで もないでしょう。

ペテン師の追放を

 実は、大阪都構想は橋下のオリジナルではありません。元となるプランを関西財界が打ち出しています。関西経済同友会が02年にまとめた提言『関西活性化 のために大阪府と市の統合を』などがそうです。新自由主義路線にもとづき、巨大企業の儲けに奉仕する都市づくりを「橋下人気」を利用して進める−−これが 財界の描くシナリオです。

 もっとも、一時は8割を超えていた橋下の支持率も最近では6割を切るまでに下がっています。グローバル資本に重用されている橋下ですが、しょせんはペテ ン師にすぎません。利用価値がなくなればポイ捨ての運命にあります。最近の橋下のなりふり構わぬ行動は、焦りのなせるわざではないでしょうか。

 ともあれ、住民生活を破壊する大阪都構想を許してはなりません。ダブル選挙「大阪秋の陣」は、橋下のウソを暴き、追放する機会としなければならないので す。 (M)
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