2011年11月18日発行 1207号

【ロンドン反戦通信 樺(かんば)浩志 93 金融街シティで占拠行動 英国で広がる「我ら99%」】

 「資本主義反対!」。たそがれ時のロンドンを、学生たちが元気一杯に唱和しつつ金融街「シ ティ」に向けて歩き始めた。10月29日土曜、たった今まで『教育活動家ネット』の一日会議に参加していた学生たちだ。会議会場は筆者がいま在籍するキン グズ大学。全英から約400人の学生と大学講師労組組合員が参加した。数週間後に迫る学生デモや複数労組一斉ストの方針等について議論した他、教室のイン ターネット設備を使ってスカイプで米国にテレビ電話し、ウォール街占拠に取り組むニューヨークの学生とエールを交わしたりした。そして会議後、地方大学か ら上京した学生を中心に約50人が、「占拠」開始後15日目を迎えるシティに向け即席デモを開始したのだ。

  警察にはまったく無届けのデモ。それでいて「学生と労働者は共に立て」と大書した横断幕を広げ、歩道だけでなく車道にもせりだし元気一杯(傍若無人?)に 「ここは誰の道か?我々のだ!」等の叫びをビル街にこだまさせた。「占拠」の現場、百以上のテントが林立するセント・ポール大聖堂の西側広場は、キングズ 大から約1キロの距離。学生たちの「支流」デモは、大聖堂横で集会をしていた数百の人々に迎え入れられた。大聖堂の階段をあがり、「団結する限り我々は負 けない!」とシュプレヒコールをくり返した。


スペインの行動に呼応

  「米国のウォール街占拠のような新しい運動をここ英国でも始めよう。拡散希望。連帯を」というツイッターのメッセージが流れたのは9月25日のことだっ た。そして10月15日、スペイン各都市で占拠行動を続ける「怒れる人々」の呼びかけに応え、英国各地でも「オキュパイ(占拠)」行動が始まった。国際情 勢が人々の心を揺さぶったのだ。フェイスブックで占拠情報を「フォロー」する人は3週間で9千人に達した(10月末現在は2万6千人)。ロンドンの当初の ターゲットは証券取引所であり、その眼前にあるパタノスタ広場だった。だが「私有地だから」と警察が出入りを禁止してしまったため、隣接地のセント・ポー ル大聖堂西側広場で集会が行われた。ものものしい警察阻止線によって包囲されつつも人々は恐れなかった。

 4千人が集まり、「我々が99%だ」等の横断幕を張り、「我々はお前たちの家畜じゃない」「グルル!銀行幹部を投獄しろ」「資本主義体制を転覆しよう」 等、用意してきた手製プラカードを掲げた。あるいは現場で書き始めた。これまでの要求運動と違い、資本主義体制そのものの批判に踏み込む主張が目立った。

百以上のテントが林立

  当初70張りだったテントは倍以上に増え、翌週には近くのフィンズベリー広場にもテント村が出現、占拠が始まった。昼は「人口」が減るが夕方や土日には増 殖し、冒頭のような「支流」デモがいくつも登場した。テント村から「出撃」するデモもあった。25日は諸労組合同の年金請願行動、26日は建設労働者の賃 下げ抗議行動…等、様々な行動日程が張り出され、支援が呼びかけられた。張り出されるポスターは行動呼びかけだけでなく、風刺絵や芸術的作品も多く、テン ト村はまるで諸運動体の特設本部・展覧会・出撃基地・常設集会場のような観を呈している。

  それだけに反動も大きい。警察は夜間ヘリで赤外線撮影を行い、「人の寝ていないテントが多いから強制排除しても問題は少ない」と強弁し始めた。大聖堂教職 者トップの辞任で強制排除の可能性がなくなったのも束の間、「テントは公道上にあり強制排除可能」という主張が登場した。ロンドン当局はすぐにでも強制排 除を望んでいる。今後の情勢から目を離せない。 (11月5日)


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