2011年12月02日発行 1209号

【『ポスターガール』『IVAW 明日へのあゆみ』 一橋大学で上映会】

 11月12日、東京・国立市の一橋大学で、イラク帰還兵をテーマにしたドキュメンタリー 『ポスターガール』と『IVAW 明日へのあゆみ』が上映された。上映を準備してきた同大学院生の中村さんから、報告を寄せてもらった。



 両作品ともIVAW(反戦イラク帰還兵の会)のメンバーが中心人物となっている。IVAWは米軍のイラクからの撤退、イラクの人々に与えた損害の賠償、 帰還兵に対する補償を求めて結成された団体だ。

 アメリカが「テロとの戦い」を始めて10年となる今年の秋から上映会が始まり、今回で都内で4回目の上映会となる。場所がら、市民のほか一橋大学をはじ めとした大学院生も含めて年齢層もさまざまの約30人が集まった。

 上映会前日の11月11日は、アメリカでは退役軍人の日。その日に合わせて出されたIVAWの声明では、女性兵士が強いられる苦しい体験(性的トラウ マ・軍事的トラウマ・上官からの差別など)に目を向けるよう注意が喚起された。『ポスターガール』も、イラクで民間人に銃を向けていた罪悪感とイラクの人 々や戦友の死のショックから、帰還後PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ女性兵士ロビン・マレーに焦点を当てている。

 帰還兵のPTSDについては日本のテレビ報道などで知っている人も多かったが、ここまで深く、一人の人間の生々しい心の傷とそこからの回復過程を描いた 映像を目にしたのは初めてだという感想が上映後の交流会で出された。

 『IVAW 明日へのあゆみ』では、アメリカ・ウィスコンシン州知事による公務労働者の権利はく奪に抵抗するために立ち上がった労働者と反戦帰還兵たちの連帯の様子 を、多くの参加者が新鮮な驚きと感動をもって見入った。

上映会がつながりの場

 参加者の中には反原発デモや格差社会の問題を訴えるオキュパイ・デモに賛同・参加している人々も多い。しかし、何人かの若い参加者からは、労働組合やデ モ活動などが「自分とは遠い存在」と感じられるという意見も出た。最近日本で起きているデモでも警察の介入や不当逮捕が問題として指摘され、それもデモへ の参加を躊躇させる一因と考えられるが、『IVAW 明日へのあゆみ』では「鎮圧」する側の州兵(IVAWメンバー)が「敵は労働者ではない」「我々も労働者である」として労働者との連帯にまわった点に目を 開かされた参加者も多いのではないだろうか。

 また、今回は自衛隊の研究をしている大学院生も参加し、「イラクの民主化のため」という大義名分でリクルート活動を行う点が自衛隊とも共通していること や、元自衛官がデモに参加することはあり得るかといった議論が活発に行われ、私も含めて研究の成果を社会的に還元していくことの重要性を改めて感じる機会 となった。

 このように年齢や問題関心、運動との距離もさまざまな人々が場を共有し、活発な意見交換ができたのも、2つの映像の持つ力の大きさゆえだろう。上映会自 体が「つながり」の場になっていると感じた。
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