2011年12月09日発行 1210号

【パナソニックの大量首切り許すな 労働者の生活も地域経済もお構いなし】

 グローバル企業の代表格パナソニックは、グループ全体で1万7千人にのぼる大量首切りと事 業縮小を加速させている。収益のためには労働者の生活も地域経済もお構いなしの無法を絶対に許してはならない。


首切りのための「赤字」

 パナソニックは10月31日、2012年3月期決算の見通しを発表。7月末の300億円の黒字見通しから一転して、4200億円の赤字見通しに修正し た。これは、02年3月期、前中村邦夫社長(現会長)時代の4310億円の赤字に次ぐ史上2番目の赤字決算となる。02年の赤字は、初めて正社員の首切り に踏み切ったリストラ経費の損失による。今回の赤字も、リストラ・人員削減のために作り出されたものである。

 内容をみてみよう。

 まず、薄型テレビ事業からの撤退と言うべき生産台数の大幅縮小だ。プラズマディスプレイでは、茨木工場の事業撤退、3千億円をかけて建設したばかりの尼 崎第3工場の生産休止・減損処分(注)、同第1工場設備の生産中止。液晶では、姫路工場の減損処分、茂原工場の休止・売却。国内の生産設備のほとんどは廃 棄される。プラズマディスプレイの生産は、尼崎第2工場だけとなり、台数は半減。尼崎工場だけで4400億円、液晶部門も入れると9千億円の設備投資のほ とんどが消える。

 これに加え、半導体事業の縮小、三洋電機との重複事業解消、人員削減など、「構造改革」と銘打った首切りのために5140億円の損失を計上しようという のだ。

世界で1万7千人削減

 02年のリストラは、プラズマディスプレイ事業という「成長商品」を掲げていた。今回の大リストラは、看板とする「成長戦略」すらない縮小路線である。

 大坪文雄社長は「急激な円高や、価格の下落など複合的な要因で08年度からテレビ事業の収支が悪化。あらゆる手を打ってきたが思うようにいかず、設備が 過剰となった」と弁明する。

 薄型テレビ事業は、10年度だけで営業利益620億円の赤字、過去3年間で2千億円の赤字であった。薄型テレビにおけるプラズマディスプレイの比率も、 05年度37・3%、07年度18・5%、10年度11・5%と減少の一途をたどっていた。中村前社長、大坪社長はいずれもテレビ事業を進めてきたAVC ネットワークス社の出身。自ら推進してきた事業にこだわり傷口を広げた。

 大坪社長は、10月に尼崎工場をテレビ用パネルと製造工程が似かよった太陽電池製造に転用すると発表したが、翌日にはコスト高で採算が合わないため断 念、と撤回するなど混乱している。

 迷走するパナソニックに貫かれているのは、これまでの水準をはるかに超える大リストラである。4月28日に発表された新経営方針は、完全子会社化した三 洋電機とパナソニック電工を含むグループの再編と構造改革で12年度末までに1兆6千億円の事業創出を打ち出すとする。その眼目は2年間にグループ全体で 約1万7千人を減らし12年度に35万人規模の体制にするところにある。

 プラズマディスプレイ事業からの撤退に伴い、尼崎工場ではすでに1千人が解雇されている。中村現会長が01年に行なった大リストラ1万3千人を超える1 万7千人(今後これを大きく上回ることは必至)の首切りが今、さらに加速されようとしている。

テレビ製造は委託企業の手で
  製造委託するテレビメーカー(2009年実績〜11年見通し) 2011年度
  生産規模
製 造委託先企業 サムスン電子 ソニー シャープ 東芝 パナソニック 見通し(万台)
フォッ クスコン     2430
TPV   検 討中 2080
TCL         1050
ウィ ストロン       900
ヴェ ステル   検 討中 検 討中   900
コ ンパル   検 討中   800
Auo/BriView 検討中     600
オ リオン     470
ジェ イビルサーキット         100
●は取引あり、◎は2011年から取引開始(週刊ダイヤモンド11月12日号から)

海外の奴隷労働に依存

 大坪体制は、テレビ事業撤退後、三洋電機、パナソニック電工完全子会社化で売上減少を防止し、世界の事業拠点370か所の約1割を縮小するという。国内 外を問わず労働者への解雇攻撃はますます拡大する。

 この背後には、自社一貫生産から、生産は自前で行なわず外部委託するという世界的な転換の流れがある。すでにサムスン電子やソニー、シャープなどは外部 委託に舵を切っている。そうした委託先のひとつである台湾企業「フォックスコン」(鴻海精密工業)は、世界の民生機器の40%超を生産する。従業員100 万人といわれ、中国深●(しんせん)工場には40万人が働く。一日15時間労働、月間残業80時間、賃金3万円弱という奴隷労働だ。このような製造受託企 業の伸長が著しく、パナソニックも自社一貫生産体制から大きく転換する方針だ。

 非正規労働者をモノ扱いしてきたパナソニックは、「不採算部門」をそぎ落として労働者を大量に解雇し、今度は中国人労働者の奴隷労働への依存を強めなが ら生き延びようというのだ。グローバル資本は、儲けさえあれば何でもありの極めて野蛮な資本主義に純化している。

 パナソニックの無法な工場閉鎖、解雇攻撃を許してはならない。パナソニックPDP吉岡争議とともに、内部の労働者・地域住民と連帯し、4兆円にものぼる 内部留保を吐き出させる闘いを作り出そう。

(注)減損処分 投資の回収が見込めなくなった場合に、その分を損失として計上すること
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