2011年12月09日発行 1210号
【どくしょ室/低線量・内部被曝の危険性 −その医学的根拠−/医療問題研究会編 耕文社/本体1000円+税/少しの
被曝でも人体に有害】
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福島第一原子力発電所の事故によって大量の放射性物質が広範囲にまき散らされた。3・11
以降、私たちは被曝の影響を無視して生活することができなくなってしまった。
こうなることを原発推進勢力は予見していたのだろう。事故発生直後から御用学者連中がテレビに出演しては「被曝は怖くない」と吹聴し始めた。いわく「こ
の程度の量ならただちに健康に害を及ぼさない」「放射線は微量なら安全。むしろ体に良い」「神経質になるほうがよくない」等々。
ちまたにあふれる非科学的かつ政治的な言説を放置しておくわけにはいかない。私たちの安全や健康を脅かし、未来を担う子どもたちを危険にさらすことにな
るからだ。本書はこうした問題意識で執筆された。
執筆者の医療問題研究会(本紙コラムニスト、ドクター林でおなじみ)は市井(しせい)のお医者さんの集まりである。インフルエンザ・ワクチンの問題をは
じめとして、効かない薬・危険な薬が世に出回っていること、その背景に製薬資本の儲け第一主義があることを告発し続けてきた。
たしかに、メンバーの中に放射線被曝の専門医はいない。だが、彼らには市民の健康を守る医療労働者としての良心がある。科学に対する誠実さがある。メン
バーは世界で公表されている放射線被曝に関するデータを集め、それを科学的な立場で分析してきた。
その結論は明快である。放射線被曝、とりわけ放射性物質を体内に取り込むことで起きる内部被曝は、低線量であっても人体に有害である。「被曝にはしきい
値(この量を越えない限り安全という値)がある」という日本の「専門家」たちの主張は大ウソなのだ。
小児はもちろん大人でも低線量被曝でがんなどが増加することは多くの調査で明らかになっている。たとえばチェルノブイリ原発事故の場合、汚染度が高くな
いとされている地域でも小児甲状腺がんや白血病の増加がみられる。
驚愕のデータがある。ギリシャはチェルノブイリから約1200qも離れているのに、乳児白血病が2・6倍に増えた。放射能にきわめて弱い胎児には、ごく
低線量の被曝でも深刻な影響があるということだ。
さらに、稼働中の原発周辺地域で小児がんや白血病が増えていることがドイツの研究で確認されている。原発は事故を起こさなくても放射能漏れを起こしてい
る。その存在じたいが人体に有害なのである。
本書が示す最新の科学的知見は、現在の日本がまったく異常な状況であることを物語っている。政府・電力会社・マスメディアによる被曝の危険性隠しを打ち
破るには、私たち自身が正しい知識を身につけ行動するしかない。原発廃止の運動や学習会など様々な場面で、本書をフル活用してもらいたい。 (O)
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