2011年12月16日発行 1211号
【バークレーでオキュパイ行動/〈現地報告〉マブイ・シネコープ 木村 修代表/学生が、市民が、歴史的大行動/「この
国を変える新しい力だ」】
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9月以降、全米に広がる「オキュパイ(占拠せよ)・ウォールストリート」の運動。カリフォ
ルニア州バークレー市のオキュパイ運動を取材したマブイ・シネコープの木村修代表から報告が寄せられた。
紅葉が秋空に映えて、行きかう学生たちの表情もはつらつとしているカリフォルニア州立大(UC)バークレー校キャンバス。人波をかき分けて中央広場(ス
プロール広場)に進み出る。石段に立ったオキュパイ運動スタッフのコールに合わせて全学の学生の声が響き渡る。「これがこの国を変える新しい力だ」
11月15日、オキュパイ運動がここで始まってちょうど1か月目のゼネラル・アセンブリー(全員集会)が始まる瞬間だ。

力強いコールと拍手
今年2回目のバークレー市訪問。取材の主眼は、アフガン爆撃反対決議から10年目のバークレーにあった。しかし全米に広がるオキュパイ運動はまたたく間
にその私たちを巻き込んでしまう勢いだった。この日は郊外の風力発電所の取材に出たのだが、2時をすぎた頃カーラジオからオキュパイ速報が飛び込んで来
た。オークランドから約2千人のデモがバークレーに向かって行進中だという。
IVAW(反戦イラク帰還兵の会)のスコット・オルセンさんへの警察の暴行からストライキに発展した軍港オークランドのオキュパイ運動。ここバークレー
でも、市議会前広場とバークレー校スプロール広場にテントサイトが作られて1か月になる。オークランドとバークレーのオキュパイ運動が合流して警察に抗議
し、占拠支持を訴えて合同の全員集会を5時から始めるとのことだ。
11月の西海岸の日暮れは早い。さっそく私たちもキャンパスに直結するテレグラフアベニューを走った。5時を少し回ると、60年代フリースピーチムーブ
メント(言論の自由運動)の拠点となつたスプロール広場は、5千人を超える学生で埋め尽くされた。
スタッフがハンドマイクで「マイク・チェツク」と呼びかけると、全参加者が「マイクチェック」と繰り返す。オキュパイ運動で各地のテントサイトに広がっ
た人間拡声器のスタイルだ。歴史的運動となった舞台の石段には「これがわれわれの歴史だ」「歴史はよみがえる」と書かれたパネルが立てられ、1964年と
2011年を対比して写真が掲示されている。これだけの学生がこの数週間またたく間に47年前の歴史を体で感じ取ってきている。想像が駆け巡る。
翌日知ることになったが、この日の全員集会は州政府と大学理事会に対する公開質問状(後述)を採択した。全員が発言者に集中し、和気あいあいとしていて
しかも力強いコールと拍手が間髪をおかず沸き起こる。実にすがすがしい。胸がすくような光景といったらいいのだろうか。

一般市民も合流
この日は夜7時から市議会が開かれる日。ひととおり全員集会の光景をカメラに収めて議場に移動した。夜のパブリックコメントではバークレー市立大学の学
生が占拠運動への市としての理解と協力を訴えていた。
しかし夜8時半すぎ、再度私たちはキャンパスに駆け戻ることになった。友人のシャーマンさんが「歴史的集会だ、絶対に戻ってこい」と興奮を抑えきれずに
電話口で叫んでいる。広場に駆けつけると一般市民も加わって夕刻時の人垣をひと回りもふた回りも大きくしたした大集会。ビルの屋上にも相当数の学生が座り
込んでいる。人波を泳ぐようにかき分けてステージの見えるところまで前進する。
この夜、クリントン政権の労働長官でオキュパイ運動を当初から全面的に支援してきたロバート・ライヒ教授が記念演説をすることになったのだ。言論の自由
運動の伝説的学生リーダー、マリオ・サビオが立った石段に演台が据えられた。夜半の冷気を吹き飛ばすばかりの拍手を巻き起こした教授のむすびのフレーズを
紹介しよう。「最も根本的な問題はすべての人々に保障されるべき機会の均等が破壊され、この国の建国の礎となつた道徳が蹂躙されていることにあるのです」
「しかし今や無関心の時代は終ったのです」。広場の最前列から後方へ黒い人波と拍手が波音を立てるように広がっていく。
公教育は生きる権利
16日、前夜採択された公開質問状を手にした。冒頭で「行き届いた公教育は特権ではなく人間として生きる権利である」と宣言し、(1)授業料値上げ、教
職員のレイオフをやめ、教育水準をまず2009年水準にもどすこと(2)その財源は富裕者・企業に課税すること(3)警察の暴力を許さず大学における言
論・集会の自由を保障することを求める。具体的行動をともなう回答がなされないなら2012年2月1日以降、ストを含む波状的行動を繰り広げる、と堂々と
宣告している。
聞けば、市の委員会のひとつ警察監視委員会では、サンフランシスコ警察からの動員要請にどこまで応えるか、その基準の厳密化を市民参加で討議していると
いう。街頭での行動と市民参加の委員会活動が縦糸と横糸に織り合って動いているさまをかい間見る。
日本に帰国する日のオークランド・トリビューン紙。「占拠、郊外に広がる」の見出しが目に留まる。ウオルマート等の大型店舗の前に白髪交じりの老人たち
が立っている。「行動は穏健だがスローガンは一段と手厳しい」と。アメリカ全体に広がる地域末端からの地殻変動は今、地表に湧き出したばかりなのかもしれ
ない。

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