2012年02月17日発行 1219号

【本当のフクシマ/原発震災現場から/第2回 タブー視される「自主避難」/議事録から消えた「避難」】

 放射能による健康被害は、小動物→子ども→敏感な成人→一般の成人の順に現れるといわれ る。広島で自身も被爆しながら6千人近い被爆者を診察し内部被曝の第一発見者とも言われる肥田舜太郎医師は、鼻血・下痢・紫斑といった内部被曝の初期症状 が福島県民に現れるのは2012年春ごろと考えてきた。

 だが実際にはずっと早く、2011年6月頃には子どもたちに症状が現れ始めた。通常ではあり得ないサラサラとした鼻血が出て、ティッシュペーパーの箱が 空になっても止まらない。わが子をあらゆる病院に連れて行くが、ことごとく「ストレスが原因」で片付けられる。母親たちの危機感とメディア・政府・医師へ の不信が決定的になったのはこの頃だった。

 多くの母親たちが「避難するかしないか」で苦悩していた6月、佐藤雄平知事は「県からの人口流出を防ぐために私はあらゆる努力をしてきた」と記者会見で 発言する。なるほど、佐藤知事は県民を「自主」避難させまいと今なおあらゆる「努力」を尽くしている。

  原発事故直後から穏やかでない情報が流れている。「福島市長が家族とともに避難し、山形から通勤している」という。真相は明らかでないが、そうした話は次 から次へと出てくる。

  郡山市長も自分の孫を避難させている、という話が流れてきた。郡山市議会で市民派議員のひとりである駒崎ゆき子さんは、市長が孫を避難させているのは事実 なのか、と市議会で質した。すると、市長はその質問に答えなかったばかりか、駒崎さんは議長に呼ばれ、発言を議事録から削除すると告げられた。「個人のプ ライバシーに関わる質問をした」というのが削除の理由である。

 避難が事実だとしても、私はそれを非難するつもりはない。駒崎さんもそうだと思う。誰だってわが子、わが孫はかわいいし、それで市長のお孫さんの健康が 守られるなら結構なことだ。言いたいのは、避難できずにいる多くの母親の苦しみになぜ想像力を向けることができないのかということである。

 県民に対し、本当に必要な放射能汚染の情報を隠して「逃げるな。現実と向き合え」と言いながら、自分や自分の親族だけはいち早く避難させる―。これが福 島県内の自治体首長の姿だとしたらあまりに悲しい。

     (水樹 平和)


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