2012年02月24日発行 1220号

【日米合意 グアム移転を先行実施 根拠失う在沖海兵隊基地 新基地阻止・普天間撤去のチャンス】

  日米両政府は2月8日、在沖海兵隊のグアム移転を普天間基地の「移設」と切り離して先行実施することを骨子とする米軍再編見直しの基本方針を発表した。グ アム移転と普天間「移設」をセットにした従来の「パッケージ合意」の破綻を意味する。米国内でも海兵隊の沖縄駐留に疑問が広がっている。いま新基地断念・ 普天間閉鎖を迫る時だ。

崩れる沖縄の地理的優位論

 基本方針は、(1)普天間基地を名護市辺野古に移設する現行計画が唯一有効な進め方(2)在沖海兵隊のグアム移転と嘉手納基地以南の米軍5施設の返還を 先行させ、普天間基地の移設から切り離す(3)沖縄に残る海兵隊は、2006年のロードマップどおり(1万人)とする、というもの。

 米軍側がグアムへの移転規模を8千人から4700人に縮小し、残りの人員をハワイ・オーストラリア・フィリピンなどにローテーション派遣する意向である ことも明らかになっている。

 これまで、在沖海兵隊のグアム移転は普天間基地の辺野古への「移設」と一体の「パッケージ」とされてきた。今回米国側がその見直しを申し出た背景には、 中国の軍事的台頭に伴う軍事戦略の見直しと財政赤字削減のために国防費を削減せざるを得ない事情がある。

 中国をにらんだアジア・太平洋重視の新戦略「エアシーバトル構想」を提唱した米シンクタンクの戦略予算評価センターは、嘉手納・岩国の空軍基地、佐世保 海軍基地など米軍の主要基地が中国の弾道ミサイルの攻撃距離内にあることを懸念し、「後方地域に聖域をつくること」と基地の分散の必要性を提案している (12/18琉球新報)。オバマ大統領は昨年11月16日、豪州との間で同国北部のダーウィンに米海兵隊の戦闘部隊2500人をローテーション配備で常駐 化することで合意した。グアムの軍事拠点化や豪州への海兵隊駐留は新戦略に沿った計画と考えられる。

 つまり、沖縄をはじめ日本にある米軍基地が中国に近すぎるということであり、中国や朝鮮に近いことを在沖米軍基地の地理的優位性としてきた言い訳がもは や成り立たないことを意味している。

 一方、グアムへの移転規模を縮小するのは、辺野古「移設」が進まないことを理由に米議会からグアム移転費を全面凍結され、既存基地の拡充や港湾の改修な どができなくなったからだ。

「海兵隊=抑止力」は論外

 もともと海兵隊は強襲揚陸を担う「なぐり込み」部隊であり、あくまで米国の世界戦略のために沖縄に駐留してきた。

 米軍が進めている新戦略「エアシーバトル構想」では、その名のとおり空軍と海軍が中心となる。軍事問題研究会の桜井宏之主宰は「同構想では海兵隊の活躍 が想定されておらず、普天間基地の辺野古移設も嘉手納統合もどちらも意味を持たない。県外、国外への移転は可能だ」(12/18琉球新報)と指摘する。自 公政権下で普天間問題を担当した柳沢協二・前内閣官房副長官補も「海空の戦いで戦局が優勢になった後で投入されるのが海兵隊だ。海兵隊自体が戦局を左右す るという戦争はなくなっている」(1/1琉球新報)と述べる。

 もはや米国の軍事戦略からも、海兵隊が沖縄や日本に駐留する意義はない。米国内で、在沖海兵隊を撤退または他へ移転すべきだという意見が強まっているの はそのためだ。

 マサチューセッツ工科大のリチャード・サミュエルズ教授(安全保障専門)は、外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』昨年9月号で、「海兵隊を沖縄から 移動させても、ほとんどの緊急事態における作戦遂行上、大きな支障は生じない」とし、在沖海兵隊を県外に移すことを提唱。ジョセフ・ナイ元国防次官補も在 沖海兵隊を豪州に移すことを提案している。

 民主党の重鎮バーニー・フランク下院議員は1月24日、在沖海兵隊は第2次世界大戦の遺物であり、「中国への懸念はあるが、それに対応するのは空軍や海 軍。海兵隊が中国に乗り込むことは決してない」と、在沖海兵隊は不要とする認識を示した。

 日本政府が県内移設の必要性の根拠としてきた「海兵隊=抑止力」論など論外だ。

普天間基地の無条件撤去を

 日米両政府に見直しを余儀なくさせた最大の力は、「県内移設ノー」の揺るがぬ民意と辺野古新基地建設を阻んできた運動だ。野田政権はなおも、辺野古への 「移設」を既定方針どおり進めるとしている。だが、その展望などどこにもない。

 沖縄県環境影響評価審査会は2月8日、防衛省の辺野古環境影響評価(アセスメント)について「評価書で示された保全措置では、生活環境や自然環境の保全 は不可能」とする答申を提出した。事実上、辺野古基地建設計画を否定したものだ。仲井真弘多知事も、こうした答申や県民の声を無視することはできない。

 辺野古新基地建設を白紙撤回させ、普天間基地の即時無条件閉鎖・国外撤去を米国に求める時だ。


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