2012年03月23日発行 1224号
【非国民がやってきた!(130)〜泣くのは嫌だ 笑っちゃおう(2)】
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モーニング娘。のCDジャケットから抜け出た空飛ぶ絨毯が新宿方面から浅草に飛んでくる。
音楽は中山千夏が歌う「もしもボクに翼があったらなあ」。
もしもボクに翼があったらなあ 空はボクのもの
高く高く高く高く飛ぶんだ
幸せの星を集めて キミとボクの胸に飾ろうよ
それはボクたちのワッペン
偽モッキンポット師――懐かしいその歌声は、博士やね。
偽博士――(絨毯の上に姿を現して)モッキンポット先生、お久しぶりですね。浅草上空で会えるとは、いつ日本にいらしたんですか。
偽モッキンポット師――つい今しがたや。小松青年に最後の説教くらわせてやらんとあかんよって。
偽博士――井上ひさし先生なら天国でくつろいでいるはずですよ。
偽モッキンポット師――アホなこと言わんといて。小松青年が天国に行けるはずおまへん。
偽博士――ひさし先生は人生を賭けて日本中のみんなを笑いの渦に巻き込み、楽しませてくれました。みんなを幸せにしたひさし先生の行くところは天国しかあ
りません。
偽モッキンポット師――冗談も休み休みゆうて欲しいもんやわ。小松青年は日本一の嘘吐きやで。次から次と嘘吐きよるわ、教会の本を盗んで古本屋に売り飛ば
すわ、借りた金は絶対返さんわ。小松青年の悪さを数えたら夜が明けてまう。
偽博士――作家・劇作家は素晴らしい嘘を吐いてみんなを喜ばせるのが仕事ですから。
偽モッキンポット師――勝手にモデルにされたわては被害者や。聖職者たるわてが小乙女はんと舞台に立っただけでも大顰蹙やったのに、あのアホはわての「性
生活」まで書きなぐって売り飛ばしたんやで。
偽博士――『モッキンポット師ふたたび』最終章の「モッキンポット師の性生活」!
偽モッキンポット師――絶対許さへん。あのアホは嘘吐くことだけは日本一、いや世界一や。
偽博士――世界一って凄いな。ひさし先生が喜びそう。
偽モッキンポット師――そうか、作家に「嘘吐き」は褒め言葉になってしまうか。そやけど小松青年は最初から最後まで嘘だらけの人生やったしな。父親が小説
家やったとか吹聴して・・・名前もあやしいし。
偽博士――お父さんが小説家志望だったのは本当ですよ。で、名前って、本名のことですか。
偽モッキンポット師――そや、クイズ出したろ。石破茂になったつもりで、クイズや。
偽博士――ボクが田中直紀防衛大臣ですか? 嫌だな〜。
偽モッキンポット師――ちいとだけ我慢せえ。次の中で井上ひさしの本名はどれや。1.井上*、2.井上厦、3.井上*、4.井上*、5.井上*。どや、答
えてみい。
<参考文献>
井上ひさし『モッキンポット師ふたたび』(講談社文庫、1985年)
上記の*は造字。
1は「まだれ」と「春」を合成して一文字に。
2は、厦
3は「まだれ」と「秋」を合成して一文字に。
4は「まだれ」と「冬」を合成して一文字に。
5は「まだれ」と「季」を合成して一文字に。
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