2012年07月13日発行 1239号
【どくしょ室/原発テレビの荒野 政府・電力会社のテレビコントロール/加藤久晴著 大月書店 本体1600円+税/テ
レビが作った「安全神話」】
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福島第一原発事故を検証する際、忘れてはならないのが原発報道の問題である。原発安全神話を広めてきた責任がマスメディアにはある。特に、テレビがはた
してきた役割は大きい。
「仮に、真っ当な原発報道や原発番組がテレビで放送されていれば、福島の原発事故は起こらなかったのではないか」「つまり、原発は作られず、事故も起こ
らず、ということだ」。本書はこうした問題意識にもとづき、テレビと原発の関係を検証した労作である。
電力会社は莫大な経費を使い、原発推進のCMや広報番組を流し続けてきた。具体的な内容は本書を読んでもらうとして、大量の原発CMや広報番組には視聴
者へのPR以上の目的があった。それは巨大スポンサーとしてテレビ局を支配することにある。要は、カネの力に物を言わせ、原発に批判的な放送を封じ込めよ
うとしたのである。
かつて関西テレビ(フジテレビ系列)の局内には、次のような張り紙があったという。「左記の3項目のニュースの場合、関西電力は番組提供をおこなわな
い。(1)関西電力を含む電力会社の設備事故(2)加害者が関西電力の場合の人身事故(3)電力会社が公害訴訟ならびに損害賠償請求訴訟の被告となる場
合」
これでは「報道の自由」などあったものではない。そんな厳しい環境の中でも、原発の危険性に警鐘を鳴らす番組は存在した。広島テレビ(日本テレビ系列)
の『プルトニウム元年』シリーズ、青森放送(同)の『核まいね』シリーズなどがそうである。
これらの番組は視聴者の大反響をよび、数々の放送賞を受賞するなど高い評価を得た。ところが、政府、電力会社、局内からの風当たりは強く、制作現場には
過酷な報復が待っていた。
『プルトニウム元年』の場合、中国電力がCM引き上げという兵糧攻めに打って出た。スポンサーの怒りにおののいた局側は、番組制作スタッフ4人を報道か
ら外し、営業部門にとばす処分を行った。
青森放送では社長の首がすげ変わった。そして、総務・営業畑出身の新社長によって番組制作の母体となった報道制作部が解体され、『核まいね』の放送枠
だったドキュメンタリー番組自体がなくなった。
おそるべき話である。こうした状況は3・11以降変わったのだろうか。今回の原発事故で放射能汚染の実態をいち早く知らせたNHK・ETV特集の取材班
は、局から口頭注意を受けたという(関連本で上司や同僚を批判したというのが理由)。「原発テレビの荒野」は今なお続いている。
テレビのあり方を変えるために、著者は「視聴者が主体的に声をあげること」の大切さを強調する。良心的制作者を局内で孤立させてはいけない。マスコミ労
働者と市民の連帯が求められている。 (O)
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