2013年01月18日発行 1264号
【本当のフクシマ/原発震災現場から/第24回/「最も安全な」福島県庁食堂/私1ベクレル、あなた100ベクレル】
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福島県職員の多くが利用する県庁食堂で、1ベクレル/kgのメニューが提供されている―そんな驚くべき通報が市民から筆者の元に寄せられたのは2012年
秋だ。通報メールには、ご丁寧にも1ベクレルの食材使用を誇るかのような、県庁西庁舎食堂の張り紙の写真も添付されていた。
福島県は、国と一体になって、県民をはじめ全国の市民に100ベクレル/kgの汚染食品を押しつけ続けてきた。米だけは昨年からようやく全袋検査となっ
たが、それ以外の食品は今なお市町村ごとのサンプル検査というずさんさで市民を内部被曝の危険にさらしてきた。放射能汚染が心配で福島産を避ける市民を
「風評被害の元凶」とさんざん非難し、地元メディアを使って「風評撲滅」キャンペーンを繰り広げてきた。子どもたちの給食ですら10ベクレル以下の汚染な
ら食べさせてきた。そんな中で自分たちだけは「最も安全な」食事をしていたのだ。
もちろん、汚染のない食事をとり、健康に生きる権利は県職員にもある。問題は、なぜ一般市民にも県庁食堂と同じ基準を適用できないのかにある。福島県職
員にモラルはないのか。
「モラル? そんなものあるわけないですよ」と、情報公開請求を繰り返している郡山市の男性(本連載第20回で紹介)は語る。彼は「証拠がないので断定
はできませんが」と前置きした上で、さらに次のような事実を打ち明ける。「40歳代より上の福島県職員の大半はコネ採用。自分の頭で考えず、上の顔色ばか
り見ている連中です」
とはいえ、県職員を非難するのは酷な面もある。避難できない市民をよそに自分の家族だけを「避難」させる自治体首長の姿はすでに本連載(第2回)で取り
上げた。自治体トップがこの体(てい)たらくだから、それを見た職員の多くが「溺れる市民を見捨てて救命ボートを独り占めしてもよい」と考えるのはむしろ
当然の成り行きだろう。
郡山市長が娘と孫を「治療のため」に宇都宮市に滞在させているというニュースを、最近になって地元で発行されている月刊誌『財界ふくしま』が報じた。市
民の間で根強くささやかれていた噂の一端が明るみに出た。原発避難といわれることが市長には不満らしいが、そのような「弁明」を真に受ける者はいない。
今、原発事故の被害に加え、「無能な政治・行政による二次災害」が県民に重くのしかかる。
(水樹 平和)
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