2013年07月19日発行 1289号
【本当は怖いアベノミクス/「実感を、その手に」は原理的に無理/庶民から奪うドロボー経済】
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自民党の優勢が伝えられる参院選。安倍政権の経済政策、すなわちアベノミクス
が続けば「景気は良くなるはず」という期待感が高支持率の源泉だ。しかし、アベノミクスでいくら巨大企業が繁栄
しても、労働者・市民の暮らしが良くなることはない。したたり落ちて貧者を潤す「アベノしずく」(6/27朝
日)なんてものはないのである。
「デフレ脱却のために次元の違う『3本の矢』政策を始めた。実体経済は良くなっている。強い意志を持って、必
ず日本の経済を成長させていく」。7月4日、福島市内で第一声を上げた安倍晋三首相(自民党総裁)は、自身の経
済政策の「実績」をこのように強調した。
安倍自民党のPR戦略を担う世耕弘成・官房副長官は「今回の選挙、まずは経済。1に経済、2に経済、3、4が
なくて5に経済」(7/4朝日夕)。世論受けのよくない改憲・原発・消費税増税の争点化を避け、参院選をアベノ
ミクスへの信任投票にしたい魂胆がみえみえだ。
たしかに、一時ほどではないにせよ安倍政権の経済政策は世論の支持を得ている。毎日新聞の世論調査
(6/29、6/30実施)によると、「安倍首相の経済政策によって景気回復が期待できると思うか」という問い
に、55%が「期待できる」と答えた(「期待できない」は41%)。
「暮らし向きは良くなっていない」という人がほとんどなのに、なぜアベノミクスへの期待感はしぼまないのか。
それは「企業が儲かれば、そのうち恩恵が回ってくる」という願望を多くの人びとが抱いているからだ。
「高額商品が売れているそうですね」「ボーナス増の会社もあると聞いた」「自分もあやかりたい」−−こうした
「街の声」をニュース番組で何度聞かされたことか。「日本経済に明るい兆しがみえてきた」というイメージを、安
倍政権はメディアと結託し、くり返し刷り込んできた。その戦略が現時点では功を奏しているといえよう。
巨大企業だけが繁栄
「巨大企業や富裕層の経済活動を活性化させれば、富が低所得者層に向かって徐々に流れ落ち、国民全体が豊かに
なる」。このような考えをトリクルダウン(したたり落ちる)理論という。カネ持ちが儲かれば貧乏人もおこぼれに
あずかって豊かになる、とする仮説である。
このトリクルダウン理論は、規制緩和や企業・富裕層減税といった新自由主義政策の正当化に使われてきた。「企
業の収益を向上させて、雇用や賃金の拡大につなげていきたい」「世界で一番企業が活動しやすい国にする」(いず
れも安倍首相)というアベノミクスは、トリクルダウン理論にもとづく典型的な企業優遇政策である。
この理論の誤りは事実が物語っている。同じく「企業が儲かるようになれば…」の考えで実施された小泉、第一次
安倍政権時代の「構造改革」の結果はどうだったか。
企業収益は大きく増えたが(2001年度の28兆円が2011年度は45兆円に)、民間企業で働く人びとが受
け取った給料の総額は大幅に減った(215兆円が196兆円に)。一人あたり賃金もおよそ10%低下(平均年収
454万円が409万円に)。派遣労働などの拡大で雇用は著しく不安定化した。
当時の人びとはこれを「実感なき好景気」と呼んだ。同じことが現在も起きている。
「3本の矢」は失敗済
「富のしずくが下層まで届かなったのは『改革』が不十分だったからで、トリクルダウン理論自体は正しい」。そ
んな理屈をこねる御用経済学者にだまされてはならない。新自由主義経済政策の本質は、利益を生み出した労働者に
富を還元せず、すべてを企業の利潤拡大活動につぎ込むことにある。庶民から奪いつくし、巨大企業やカネ持ち連中
に与える政策なのだ。
安倍政権がやっていること、やろうとしていることがまさしくそうだ。社会保障費の負担増と給付抑制、非正規雇
用の拡大、消費税増税などで労働者・市民から搾り取り、その一方でグローバル資本には投資減税や法人税の大幅引
き下げを約束する。これではGDP(国内総生産)がいくら増えても、人びとの生活はますます苦しくなる。断言し
よう。アベノミクスによって雇用と生活の不安が解消されることはない。
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長引く不況の根本原因は、働く者の賃金が下がり続けていることにある。家計収入が減っているから消費が低迷
し、国内需要が増えない。つまり、企業があこぎな搾取をやめて労働者の賃金を上げない限り、不況を克服すること
はできない。この単純な真理を安倍自民党は無視している。
そもそも、「3本の矢」と称される政策(金融緩和、公共事業費のばらまき、規制緩和)はくり返し実行され、失
敗してきたものばかり。安倍自民党はそれをアベノミクスという呪文でごまかしているだけなのだ。そのような悪徳
宗教もどきに引っかかってはならない。 (M)

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