2013年10月11日発行 1300号
【橋下「ブラック企業特区」/首切り自由と奴隷労働拡大/安倍規制改革の露払い】
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大阪市・府の特区提案
橋下大阪市長は9月11日、政府が募集している「国家戦略特区」案について、大阪市と大阪府が共同で「チャレ
ンジ特区」案を内閣府に提出することを発表した。大阪府の御堂筋エリアに進出する企業に対し、労働者に一定の報
酬を支払えば、残業代不支給を認め、労働者の解雇を企業が自由にできるとするもの。憲法も労働法も否定し、企業
に好き放題の労働者支配を認める「ブラック企業特区」と呼ぶべきとんでもない内容だ。
大阪府・市の資料によると、「チャレンジ特区」案とは「御堂筋エリアを対象に、能力主義・競争主義に果敢に
チャレンジする高度な能力を持つ内外の人材や、そうした人材を求める企業が集まる条件を整備するため、労働法制
の緩和を図る」。一定額以上の年収のある人を対象に、法律でしばりのある労働時間の上限規制(1日8時間、週
40時間)を適用しない、解雇回避努力などを行った後でしか解雇できない規定を除外する―というものだ。
橋下市長は記者会見で「能力主義・競争主義を全面に打ち出して、一定の報酬以上の労働者には労働法制は適用し
ないというもの。労働法で守られなくてもいいよという人もいるでしょう」と発言した。松井大阪府知事も、対象者
の年収をめぐって「最も層が厚い中間層(年収300万〜400万円)も含まれるのか」との質問に、「これから」
とはぐらかした。
「収入1千万円以上の『高度人材』を対象」と報道されるが、一般の労働者も対象にしようとの意図は明らかだ。
安倍の労働法破壊に呼応
橋下市長、松井知事による「チャレンジ特区」案は、安倍政権が進める「国家戦略特区」のお先棒担ぎだ。
7月26日付け日経新聞は「特区で雇用規制緩和」と題して次のように報じた。「参院選前は世論の反発を招きか
ねない労働改革に踏み込まなかったが、特区に絞って抜本的に規制を改革する。雇用分野ではまず、解雇規制を緩和
する。企業が従業員に再就職支援金を支払えば解雇できる『事前型の金銭解決制度』の導入に関して調整する。全国
に支店を持つ大企業の場合、特区内に本社があれば、地方の支店も適用対象にする案がある。企業の従業員は原則、
労働基準法などが定める法定労働時間のしばりがある。一定の条件を満たした社員には法定労働時間の規制を適用し
ない『ホワイトカラー・エグゼンプション』の導入も議論する」
この内容を大阪で忠実に具体化したのが橋下・松井の「チャレンジ特区」に他ならない。安倍が労働規制緩和をぶ
ちあげ、実行部隊として大阪の橋下・松井が応じる。こうした手口で労働法なき無法地帯を出現させ、既成事実化し
ていくのがグローバル資本の狙いだ。
無法地帯が全国に
9月20日、安倍は産業競争力会議課題別会合で「国家戦略特区は規制改革の突破口。臨時国会に提出する特区関
連法案の中に具体的な規制改革成果を盛り込みたい」と表明。10月にも特区指定と急ピッチでの展開を指示してい
る。
さらに経済産業省は、臨時国会に提出予定の産業競争力強化法案に、先進的な技術開発などに取り組む企業に規制
緩和を特例的に認める「企業実証特例制度」の創設を盛り込む方針だ。この特例制度の一環として、労働時間規制の
適用除外の実験的な導入も認める。年収で800万円を超えるような大企業の課長級以上の社員を想定しているとさ
れ、残業代などを支払わず、休日・深夜勤務での割増賃金などもない。トヨタ自動車や三菱重工業など数社が導入を
検討しているという。
「特区」「実験」というごまかしで、労働法適用除外の奴隷労働公認地区を作り出し、全国各地の事業所に無法地
帯を拡大していく戦略だ。
この攻撃は全労働者にかけられたものだ。安倍・橋下の「ブラック企業特区」構想をを許してはならない。
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