2014年11月28日発行 1356号

【安倍首相衆議院解散表明 戦争 原発 貧困 反対運動が追いつめた】

 11月18日、安倍首相は消費税10%への増税の1年半延期とともに衆議院の解散を表明。衆院選は12月2日公示、14日投開票となる。解散表明は、戦争・原発・貧困に反対する運動に追い詰められ、余儀なくされたものだ。

民意は戦争・原発反対

 安倍が解散するしかなくなったのは、2年にわたる民意無視の戦争・原発・貧困路線すべてが行き詰まったためだ。

 11月16日に投開票された沖縄県知事選では、辺野古新基地建設に反対する翁長(おなが)候補が10万票の大差で圧勝した。自衛隊の海外出撃拠点ともなる新基地建設のためのボーリング調査強行に対し、沖縄県民は改めて圧倒的なノーの民意を突き付けた。

 7月1日の集団的自衛権の行使解禁閣議決定に怒りの世論と行動が広がり、臨時国会では関連法案提出を先送りせざるをえなかった。安倍の戦争政策の破綻は明らかだ。

 安倍・自民党は、10月福島県知事選で独自候補を擁立できなかった。鹿児島・川内(せんだい)原発の再稼働については、原子力規制委員会に「合格」判断を出させ、薩摩川内市議会・市長、鹿児島県議会・県知事も承認した。しかし、多くの住民が原発20キロ圏内に居住するいちき串木野市で人口の過半数を超える反対署名が集まったのをはじめ、県民世論は再稼働反対だ。火山学会も火山活動の予測困難を指摘し、規制委の審査基準を批判している。

 11月のNHK世論調査で57%が再稼働反対(賛成32%)など、どの世論調査でも常に5〜6割が反対を占める。

アベノミクスの失敗

 消費税増税の先送りの背景には、2年間行われてきたアベノミクスの破綻がある。

 日本銀行が大量の資金を市場に放出し、株価と物価は上昇したが、実質賃金の下落が今年9月まで15か月にわたって続いている。さらに、生活保護の切り捨てなど社会保障削減も進められた。4月には消費税を8%に増税。すべてが国民生活を直撃した。

 アベノミクスは1%のグローバル大企業と富裕層をぼろもうけさせただけで、労働者の所得減と負担増で個人消費は低迷し、誰が見ても経済は冷え込んでいる。

 11月17日発表の7〜9月GDP(国内総生産)は、予測をはるかに下回るマイナス1・6%(年換算)となった。

 NHK世論調査では、「景気回復を実感しない」53%と「実感する」10%を大きく上回った。安倍政権の経済政策について「評価しない」48%となり、「評価する」47%を超えた。来年10月の消費税10%引き上げは「時期を遅らせる」「引き上げをとりやめる」が計74%に上った。

 消費税10%への増税を強行すれば、生活と経済全体の一層の悪化は必至であり、怒りと不満の爆発を恐れて増税は延期されたのである。増税先送りは、アベノミクスが失敗したことを安倍自らが認めざるをえないことを意味する。破綻を覆い隠すために、“解散・総選挙で国民の判断を受けた増税先送り”ととりつくろおうとするものだ。

 反対世論を押し切って戦争・原発・貧困政策を進めた結果、内閣支持率は、直近の各世論調査で42%(朝日)、44%(NHK)などと激減し第2次安倍内閣で最低となった。

 年明け以降、集団的自衛権関連法案の審議や原発再稼働強行など、国民の総スカンをくらう政策が連続する。野党への支持が低い今のうちに衆院選を行い、とにかく多数を維持して危機を乗り切ろうというのが安倍の本音だ。

運動の力で安倍退場を

 安倍政権の政策への社会的批判を拡大して支持率を下げ、解散表明へと追い詰めた原動力は、民衆の運動だ。

 沖縄では、辺野古新基地建設ためのボーリング調査に対し、8月以降3度の県民大行動、連日のキャンプ・シュワブ・ゲート前行動、海上での抗議・阻止行動が取り組まれた。調査工事は中断され、埋め立て計画変更申請の許可判断は知事選後まで引き延ばされた。こうした運動と世論が“オール沖縄”で新基地に反対する翁長勝利を支えた。

 集団的自衛権に反対する数千人規模の国会包囲が毎月行われ、集会・行動は全国に広がっている。

 事実上自民の不戦敗に等しい福島県知事選では、声を上げることさえ困難な中で井戸川候補が3万票を獲得。政府と福島県の被曝隠し・帰還強要政策に風穴を開けた。川内原発再稼働に対し、9月には東京での反原発集会に1万6千人、鹿児島県大集会に7500人が参加した。地域レベルでの継続的な行動や署名、損賠訴訟などを背景に再稼働反対世論は揺るがない。

 「生涯ハケン」―非正規雇用の一層の拡大を狙う労働者派遣法改悪案は、「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション」を先頭に連合まで含む上部団体の違いを超えた反対行動で廃案に追い込んだ。

 さまざまな闘いがいま“安倍はヤメロ”の共同の闘いに結ばれつつある。

 迎える12月衆院選は、2年間の安倍路線に審判を下す場となる。運動の力で戦争・原発・貧困に反対する勢力の前進を勝ち取り、安倍・自民党政権にとどめをさそう。



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