2015年01月30日発行 1364号

【竹中平蔵とんでも発言「正社員なくせ」/これがアベノミクス・成長戦略の正体だ】

 安倍政権の産業競争力会議メンバーである竹中平蔵慶応大教授が新年早々、テレビの討論番組で「正社員をなくせ」と発言した。断じて失言などではない。昨年の通常国会から焦点となっている派遣法改悪案、新たに狙われる残業代ゼロ法案を成立させるための確信犯的発言だ。

「正社員は過保護」

 問題の発言は、元日に放送された政治討論番組「朝まで生テレビ元旦スペシャル」で飛び出した。インターネット上の書き起こし発言録によると、竹中は、日本の雇用政策をめぐる辻元清美衆院議員らとの討論の中で「どうして派遣が増えたかというと、…日本の正規労働は世界の中で見て、異常に保護されているからなんですよ」「同一労働同一賃金を目指すと言うんだったら、正社員をなくしましょうって言わなきゃいけない」「全員を正社員にしようとしたから大変なことになった」などと発言した。

 そもそも竹中は、小泉政権で経済財政担当相、総務相、郵政民営化担当相を務め、「小泉構造改革」としてあらゆる規制緩和と民営化を推進してきた。禁止されていた製造業への派遣労働解禁は、竹中が経済財政担当相だった2004年のことだ。

 「全員を正社員にしたら大変なことになる」のはグローバル資本、経営者であり労働者ではない。竹中の発言はグローバル資本の本音を代弁している。

 竹中はまた「みんな多様な働き方をしたい」「派遣でやっている人の7割は当面派遣でやりたいと言っている」とも発言。労働者みずから非正規雇用を望んでいるかのように描き出しているが、これは嘘である。竹中が会長を務める派遣会社、パソナも理事を送り込んでいる業界団体「日本人材派遣協会」の調査でさえ約半数の派遣労働者が「正社員を望む」と答えている。

「希望して非正規」

 裏付ける公的な調査結果もある。厚労省所管の労働政策研究・研修機構がまとめた「労働政策研究報告書」によれば、非正規労働者が非正規を選択した理由として、特に男性では「正社員として働ける会社がなかったから」が1位だ。非正規労働者が増えている原因は、労働者に正規雇用を提供しないグローバル資本にある。男女ともに「自分の都合の良い時間に働けるから」が上位にランクされたのは、正規労働者も長時間労働、休日出勤、サービス残業など非人間的労働実態の中に置かれていることの裏返しである。

 竹中の言う「同一労働同一賃金」は、本来あるべき「同一労働同一賃金」とは全く別物だ。要するに、正規労働者の賃金を切り下げ、低い方、つまり非正規労働者の賃金に揃えようというものにすぎない。「同一労働同一賃金」のこんなふざけた使い方は許されない。

 現在、安倍政権は「女性が輝く社会」のスローガンの下、女性管理職比率を30%にするよう経済界に働きかけている。これに対し、経済界から「女性社員全員を管理職にしても目標を達成できない」「管理職候補がいない」との声が出ている。女性の6割が非正規労働者の現状を放置したままそのような目標など達成できるわけがない。言葉の真の意味での「女性が輝く社会」のためには、非正規労働者の正規化が最優先のはずだ。竹中が目指すのは、全く逆の一億総非正規化政策だ。

派遣労働こそなくせ

 政府は1月26日開会の通常国会に、派遣法改悪案の再提出、残業代ゼロ法案提出を狙っている。派遣など非正規労働をさらに拡大し、正規労働者には残業代なしで過労死するまで働くことを求め、非人間的労働実態の男性と同等かそれ以上に働く女性だけを経済成長のために「活用」する―これこそアベノミクスと「成長戦略」の正体だ。

 派遣法改悪、残業代ゼロ法制定を阻止しよう。正社員ではなく派遣労働こそなくし、すべての労働者が人間らしく働き生活できる均等待遇を実現させよう。

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