2015年03月13日発行 1370号

【Q&A大阪都構想って何だ/ハコモノ行政の失敗を「二重行政の弊害」にすり替え/「ワン大阪」(大阪市解体)は知事独裁の「ワンマン大阪」】

 「大阪都構想」の制度案(協定書)が2月23日大阪府議会、24日大阪市議会に相次いで提案され、3月中旬にも採決されようとしている。何が問題なのか、あらためて明らかにする。

 Q 橋下大阪市長は「二重行政」が解消されると言いますが?

 維新の会は「二重行政の解消」(維新の会HP「都構想Q&A」より、以下引用同じ)を都構想3本柱のひとつにあげています。

 知事、市長が別にいることでムダな二重行政が生み出されたとし、代表例として府のりんくうゲートタワービル(GTB、659億円)、市のワールドトレードセンタービル(WTC、1193億円)の破綻をあげます。図書館や体育館、美術館が府市ともにあること、大阪府立大と大阪市立大などを列挙。二重行政の解消で「都市間競争に打ち勝つ迅速な意思決定」とムダ遣い解消ができるとします。

 一般に、二重行政の弊害とは、自治体で所管事務が重複し、二重手続きによる行政の非効率、住民の負担増が生じることを言います。GTBとWTCの例は、府と市の大企業本位のハコモノ行政の政策的失敗であって二重行政が原因ではありません。また、大阪府大は自然科学、大阪市大は社会科学と医学に特徴があり、大阪府内の人口当たり図書館数は都道府県のうち最下位に近いという現状では、むしろ補う効果を持ち役割が違うだけで弊害ではありません。

 「府市再編の効果は東京で実証済みです!」と維新の会は主張します。が、その東京都では図書館、美術館、体育館はもちろん都にも23特別区にも存在し市民にサービスを提供しています。これを、都も含めて「二十四重」行政と批判するのでしょうか。

 維新の会は、二重行政の原因を府知事と市長の権力の並立に求めます。でも、意思決定が知事に一本化されたところで、誤った政策の下では税金の無駄遣いが飛躍的に増加するだけです。維新の会は、二重行政が原因でないものを弊害とし、知事への権力の一元化と政策強行ができる体制づくりを正当化する悪質なすり替えを行っています。

 Q 都構想の最も大きな問題点はなんですか?

 大阪市をなくして知事に権力を一元化し、財界本位の政策を推進、市民生活がどん底に突き落とされることです。

 維新の会は「都構想とは大阪市の24区を再編し5つの特別区を設置し府と市の広域行政を統合すること」とします。単に24区が5区に再編成されるのではありません。国と直接交渉でき、都市計画用途地域も自ら決定できる大きな権限をもつ政令指定都市、大阪市が消滅するのです。

 市長はいなくなり、府知事1人が広域インフラ整備などの権限を一元的に持ち担う。なにわ筋線(3200億円)、阪神高速淀川左岸線(1330億円)の建設、カジノ、リニア新幹線(東京―大阪間9兆5千億円)の誘致などです。現行の市税の4分の3を占める法人市民税、固定資産税、都市計画税、事業所税等は大阪府の収入になり、個人市民税、軽自動車税等のみが特別区税となります。特別区は現在の市税収入の4分の1に激減するのです。

 この結果、特別区はスタートから5年間でいきなり合計1千億円以上の赤字。加えて新庁舎建設など初期費用は600億円以上と莫大な不要経費を支出し、大阪市民は新たに巨額の借金を背負うことになります。赤バス(コミュニティバス)の廃止や市民交流センターの全廃に続き、市民プールの縮小、バス路線の廃止など、市民サービス切り捨てに拍車がかかることはあっても、特別区の税収が「より地域密着型の行政サービスを展開」することは不可能です。特別区には、一体的な行政やまちづくりの権限はありません。

 維新の会は「特別区になっても現在の市民サービスは全て引継がれる」「税収に加え財政調整制度により十分な財源が確保」と言います。しかし、橋下市政は行革プランで全施策・事業のゼロベースでの見直し・切り捨てを実行し、継ぐべきサービスを少なくしています。もし十分な財源が確保されるなら、なぜ当初から1千億円以上の不足が予測されるのか説明がつきません。また、特別区に配分される財政調整交付金はその配分割合すら決まっていない上、財源の大半を府に頼ることから府に従属せざるを得ない構造となるのです。

住民サービス切捨て

 さらに維新の会は、現在の住民サービスについて「削らなければならない点についての不断の見直しが必要」と留保条件をつけ、サービス切り捨てを示唆しています。

 「都構想で今まで以上の住民サービス」は全くのウソです。橋下市長の「ワン大阪」とは、市民生活を破壊し財界のために大阪を改造する「ワンマン大阪」の独裁に他なりません。絶対に許されないものです。
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