2015年03月20日発行 1371号

【3・11フクシマから4年/汚染水たれ流しは許せない 悪質な東電・国の情報隠し】

 3・11から4年を迎える福島は2月下旬、新たに発覚した汚染水流出に揺れる。高濃度汚染水が港湾内のみならず、外洋にまで垂れ流されていることが判明したのだ。

衝撃のβ線核種汚染

 発端は2月22日、福島第1原発内の排水路での高濃度汚染を知らせる警報が鳴ったことだ。東京電力の発表では、排水路から採取した水で合計1リットルあたり7230ベクレルの放射性物質が検出。港湾内に流出した水にもストロンチウム90などβ(ベータ)線核種(注)が1リットルあたり3000ベクレル含まれていた。

 衝撃的なのは2号機屋上の溜まり水に含まれるβ線核種の量だ。東電の2月24日の発表では「大物搬入口」屋上の溜まり水の中に放射性セシウム134が6400ベクレル、セシウム137が2万3000ベクレルに対し、β線核種が合計で5万2000ベクレルも含まれていた(いずれも1リットルあたり)。人体にきわめて有害なβ線核種が全体の3分の2を占めた。



 これらの溜まり水のすべてが海に流出したわけではないが、雨が降るたびに、一部が雨どいを伝って排水溝から海に流出していた。

 今回発表された汚染水の海洋流出がきわめて深刻なのは、これまでのようなセシウム中心ではなくβ線核種中心の流出であることだ。食品などを通じて人体に取り込まれると、β線はセシウムなどから多く発せられるγ(ガンマ)線と比べてはるかに大きなエネルギーを放出する。簡易線量計や、市民測定所で使われている多くの食品測定器では捕捉できない。食品に不安を抱く多くの市民が実態解明を求めているにもかかわらず、汚染実態も不明だ。

 β線核種の中でも海洋流出量が多いとされるストロンチウム90は、食品を通じて骨に蓄積しやすく白血病などの原因になる。早急に測定体制を整え、市民を被曝から守る必要がある。


またも隠蔽

 高濃度放射能汚染水が港湾内のみならず、外洋まで流出していることは事故当初から指摘されていた。しかし国・東電はその事実を隠し続け、「完全にブロック。アンダーコントロール」(安倍首相)とうそをつき続けてきた。今回の高濃度汚染水の大量流出はこうした隠蔽(ぺい)の破綻を改めて明らかにした。

 今回の汚染水流出に関しても、東電は排水路での放射線量の急上昇によって昨年4月から事実を把握していたにもかかわらず、10か月間も公表せず隠していた。経産省も原子力規制委員会も昨年12月に東電からデータを示されながら公表を指示せず放置した。国・東電一体となった隠蔽だ。

 廃炉作業の責任者、福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは「公表すべきとは思わなかった」と隠蔽を「釈明」した。そもそもこの増田は3・11当時、福島第二原発の所長を務めていた人物だ。当時の凄惨な現場を経験しながら汚染水のデータを公表すべき感覚もないとは、東電の隠蔽体質はもはや救いようがない。

いまだ解決策なし

 汚染水処理は難航を極めている。2014年度中に終わらせるとの東電の口約束は今回も破られた。タンクにたまった未処理の汚染水は27万トンに及ぶ。汚染水を薄めて処理するALPS(多核種除去装置)がトラブル続きでほとんど動かないためだ。

 原発への地下水流入を止める切り札とされた凍土遮水壁計画は、規制委さえ「不要」として東電に方針転換を求める。今なお1日300〜400トンもの地下水が原発敷地に流れ込む。

 汚染水処理の遅れはそのまま廃炉の遅れにつながる。労働者の被曝量も増えることになり、被曝線量の限度を超えた熟練労働者が現場を離れれば、さらに廃炉は遅れる。被曝線量限度を超えても労働者を現場で働かせる違法行為がまん延する危険性もある。

 東電は「最後は海に放出するしかない」と、汚染水海洋放出に怒る世論があきらめるのを待っている。それは経産省、規制委、さらにはIAEA(国際原子力機関)など世界の原発推進勢力の強い意思でもある。汚染水処理や廃炉を実現するには、この原子力ムラ、マフィアの責任を徹底して追及し、世界の海を放射能で汚染しても構わないとする「命よりカネ」路線を根本から転換させることが必要だ。

(注)β線核種 放射線の一種β線を放出する放射性物質。セシウム134などが主に放出するγ線(電磁波の一種)と比べ透過能力は低いがエネルギーが大きく、内部被曝した場合人体への影響は大きい。

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