2015年03月20日発行 1371号

【ミリタリー/エボラ出血熱対策への自衛隊派遣見送り/「国際貢献」の正体は武力行使への道】

「陸自の海兵隊」

 安倍政権は、5月にも国会に提出する「安全保障関連法案」の最終的な狙いをもはや隠そうともしない。ずばり、国内外を問わず自衛隊の武力行使に道を開くことだ。そのためには、自らの「対テロ戦争」参加表明が招いた日本人人質殺害事件を最大限利用することに何のためらいもない。

 「世界最強」の米軍特殊部隊でもほとんど成功したことのない「人質救出作戦」を実戦経験皆無の自衛隊が行なうのは現実的ではない、と与党内にも慎重論がある。これに対しては、「自衛隊は特殊な訓練もしており、対応できる能力は持っている」(3/1中谷防衛相)と胸を張って見せた。「陸自の海兵隊」と呼ばれる中央即応連隊、普通科教導連隊、西部方面普通科連隊などの存在を指しているのは間違いない。そもそも、国民の知らないところで、「専守防衛」からはほど遠い戦闘訓練を重ね部隊づくりをすすめること自体大問題であるという意識のかけらもない。そんな異常な軍事政策が進行している。

人質事件を利用

 政府は3月2日、自民党の安全保障関連法案整備に向けた会合で、自衛隊による海外での日本人救出のための法整備として想定事例をあげ、武器使用についても権限を拡大させる方針を打ち出した。(1)邦人の救出に向かう途中で通行を妨害する武装勢力の排除(2)集合場所の在外公館が占拠され人質となった邦人の奪還など5事例である。

 これらは、ペルー日本大使公邸人質事件(96年)、アルジェリア人質事件(13年、「日揮」関連の日本人10人が犠牲)、そして今年の「イスラム国」による日本人人質殺害事件を念頭においている。自衛隊の武器使用、武力行使への道をどこからでもこじ開けようとする安倍政権の執念を見せつける方針である。

 一方、自衛隊の武力行使に結びつく可能性が少ない「国際貢献」に、安倍政権はほとんど関心を示さない。

 「政府は、エボラ出血熱の感染が広がる西アフリカのシエラレオネへの自衛隊派遣を見送る方針を固めた」(2/23毎日)との報道があった。防衛省は詳細を明らかにしないが、輸送艦の定期整備のためシエラレオネでの活動を中断する英国から「任務の一時交代」の要請を受けたが、「費用対効果の面も考慮し、派遣しない方向になった」という。

 武力行使を伴うことのない自衛隊派遣など海外派兵の実績づくりにもならないと見ているようだ。

“積極的平和主義”

 この安倍政権の「国際貢献」姿勢に比して、昨年10月にシエラレオネに165人の医療関係者を派遣し、さらに300人近くをリベリアとギニアに送ると発表したキューバの国際主義は対照的である。「人的資源が最も重要である。この地域全体が経験のある医師と看護師を緊急に必要としている」(世界保健機関マーガレット・チャン事務局長)との国際的要請に応え、おそらく一国として最大の医療従事者を派遣したキューバの対応。それは、安倍首相が多用する「積極的平和主義」(実際は「武力優先主義」にすぎない)のごまかしと薄っぺらさを暴き出し、真の積極的平和主義とは何かを示している。

 安倍政権のペテンを暴き、危険な企みを止めなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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