2015年03月20日発行 1371号

【御用報道がひどすぎる/沖縄の現実を見てみぬふり/暴走安倍をメディアがアシスト】

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が毎年発表している「世界報道の自由度ランキング」。日本は今回61位だった。2010年は11位だったから、急降下もはなはだしい。実際、第二次安倍政権の発足以降、メディアはますます「国策」追随の度合いを強めている。たとえば、沖縄・辺野古の新基地建設をめぐる報道だ。

陸自常駐計画を黙殺

 米軍キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)に陸上自衛隊部隊を常駐させる計画の存在が明らかになった。尖閣諸島や先島での有事を想定し、緊急展開部隊として配置するというもの。3月3日の衆院予算委員会で、共産党の穀田(こくた)恵二議員が防衛省の内部資料を元に指摘した。

 普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設と称される新基地の建設予定地はキャンプ・シュワブの沿岸部だ。シュワブに自衛隊が常駐するなら、当然新基地も使うだろう。つまり、辺野古新基地は日米共同の軍事拠点として位置づけられているのである。

 政府は「計画は民主党政権時代のもの」と釈明しているが、陸自常駐構想が政権交代によって消滅したとは考えられない。対中国強硬姿勢の安倍政権が、自衛隊の出撃拠点となる最新鋭の基地を欲していることは明らかだ。

 沖縄の地元紙はこのニュースを大きく取り上げた。3月5日付の琉球新報社説は「今までになかった部隊を新たに常駐させるのだから、まさに軍事増強だ。政府は『沖縄の負担軽減のため』と繰り返すが、負担軽減が聞いてあきれる」と厳しく批判した。

 同社説はまた、「日米の軍の同居は沖縄のためではない。海外での米海兵隊の軍事行動に自衛隊が付き合うこと、つまり集団的自衛権行使の準備であろう」と指摘する。まさしくそのとおり。新基地建設強行は戦争国家づくりの具体化作業にほかならない。

 ところが、陸自常駐計画の発覚を全国紙やテレビはほとんど報道しなかった。国会で取り上げられたことなので、ローカルニュースという言い訳は通用しない。それでもメディアは無視した。一事が万事この調子だ。安倍政権に都合の悪い事実はなかったことにしてしまうのである。

サンゴ礁破壊も傍観

 2月17日〜18日、海上保安庁は記者クラブ加盟社を集め、異例の説明会を行った。新基地建設工事現場における海上保安官の「過剰警備」を伝える沖縄タイムス、琉球新報の地元2紙の紙面を見せ、「誤報」だと指摘した。

 この圧力が効いたのか、在京メディアは「辺野古で起きていること」を伝えようとしない。海保や機動隊の暴力行為により負傷者が続出しても、反対運動のリーダーらが米軍に身柄を不当拘束されても、多くの場合は黙殺か、ベタ記事に毛が生えたような扱いでしかない。

 サンゴ礁の破壊問題もしかり。国の沖縄防衛局が辺野古の海に沈めたコンクリート製大型ブロックによってサンゴ礁が損傷した疑いが強まり、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は2月16日、同局にブロック設置作業の停止を指示した。その後、県は現場海域の潜水調査を実施。案の定、サンゴ礁の破壊が確認された。

 これに対し、菅義偉(すがよしひで)官房長官は「一方的に現況調査をしたのは極めて遺憾だ」と県当局の対応を批判。中谷元(なかたにげん)防衛相は今回のサンゴ礁破壊を問題視しない認識を示したあげく、「夏ごろには埋め立てに着手したい」と国会で答弁した(3/3衆院予算委)。

 何たる言いぐさか。沖縄の民意を無視し、「一方的」に工事を進めてきたのは政府のほうではないか。自然破壊を軽視する感覚にも恐れ入る。あの米軍でさえ、フィリピン沖での艦船座礁事故によってサンゴ礁を破壊した際には、197万ドル(約2億3千万円)もの補償金を比政府に支払っているのである。

 沖縄に対するこれらの暴挙を安倍政権が実行できるのは、その事実が報道されず、全国的な関心事となっていないことが大きい。メディアの沈黙が安倍暴走政権をアシストしているのである。

広まる「自粛」ムード

 「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいかない」。これは安倍人事でNHK会長に就任した籾井勝人の迷言だが、同様の空気が社会全体に広がっている。政府の意向に反すると思われる行為を「自粛」する傾向のことだ。

 沖縄の基地問題で言えば、ドキュメンタリー映画『標的の村』の上映会をめぐり、横浜市教育委員会が、いったん決めた後援を「中立性を損なう恐れがある」との理由で撤回した(2/23毎日)。

 この作品は米軍機オスプレイの沖縄配備に反対する人びとの闘いを追ったもの。反対運動つぶしのために国が仕掛けた裁判の問題にも鋭く切り込んでいる。つまり、映画は安倍政権が隠しておきたい事実を暴いているがゆえに、政府の意向を忖度(そんたく)した市教委に後援を断られたのだ。

 権力への迎合により、民主的空間が急速に失われつつある日本社会。安倍政権を早く倒さないと、戦争への道まっしぐらだ。     (M)



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