2015年09月18日発行 1395号
【原発メーカー訴訟 口頭弁論始まる/メーカー免責は原発増殖の仕組み】
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福島第1原発の原子炉を製造したGE(ゼネラル・エレクトリック)、東芝、日立の3社を相手に国内外4128人が訴えた原発メーカー訴訟。提訴(第1次−14年1月30日、第2次−同3月10日)から1年半を経て8月28日、口頭弁論が始まった。この訴訟の趣旨・目的は何か。第1回期日における島昭宏弁護士の
陳述に見てみよう。
賠償は税金で
原子力損害賠償法は、原発事故に伴う損害賠償責任を電力会社だけに集中させる「責任集中制度」をとっている。同法4条1項には「原子力事業者(=電力会社)以外の者は…損害を賠償する責めに任じない」、同条3項には「原子力損害については…製造物責任法の規定は、適用しない」とある。これは原子炉の製造業者を一切の責任から免れさせ、原発体制を世界中に増殖させる仕組みだ。
福島原発事故では、原賠法に基づいて東京電力が講ずべき賠償措置額の上限1200億円を超える賠償については同法16条により政府が東電に「必要な援助」を行うこととされ、すでに約9兆円が国から東電に支払われた。つまり、被害賠償に充てられるお金は電気料金と税金によって賄(まかな)われているわけで、原発メーカーはこのお金の流れに全く関与していない。国民に事故の負担を押しつけ、メーカーを二重三重に保護する。メーカーはどんな過酷事故が起きても責任をとらず、原発を世界に拡散し、ノーリスクで儲(もう)けを増やす。この構造の不合理性を問うのが今回の裁判だ。
ノー・ニュークス権を
原発体制に立ち向かう新たな人権概念として「ノー・ニュークス権」が打ち出された。「原子力の恐怖から免れて生きる権利」を指し、一般の人が合理的な理由から放射能に起因する生命・身体・財産の侵害を受ける恐れを感じる場合、その恐れ・不安感は法的保護に値する(抽象的な権利ではない)とする。根拠を憲法前文の平和的生存権、13条の幸福追求権、25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」などにおいている。
福島事故後のノー・ニュークス権は、「完全な被害賠償を受ける権利」「損害を最小限にとどめるよう求める権利(事故の収束、生活の回復、徹底的な健康管理)」「再び同様の権利侵害が発生しないよう求める権利(事故原因の究明と原因者の特定、新たな基準による安全の確保)」として具体化される。
弁論後の報告集会で島弁護士は「原賠法は憲法に反し無効。仮に法自体が合憲としても、賠償上限1200億円の100倍もの大きな損害が発生した事故で、かつ原子炉の欠陥が原因で事故が拡大した場合にまで、その原因者を免責するこの法律を適用することは憲法に反する(適用違憲)」と述べ、被害の重大さや原子炉の欠陥などについて事実審理を行わせる重要性を指摘した。
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